中沢新一『構造の奥 レヴィ=ストロース論』

未明起床。暗い中で静かな雨の音を聞く。
瀧口修造のラディカルなシュルレアリスム詩を読んだせいだろう、なかなか消化し切れなくてしんどい。まあ、『まほあこ』のせいもないとはいえないが笑。
もう四時台から明るくなり始めるのだな。
七時まで二度寝する。
 
なんとなく Amazonコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を見ていたのだが、全体的にめっちゃ高くなったねー。わたしのもっている Canon PowerShot SX620 HS は 2018年に 2万円ほどで買ったのだが、同じクラスのだといまは 6~8万円くらいする。もちろんスマホが普及して、多くの人がスマホの高画質なカメラで撮影するようになったからだろうな。コンデジが売れなくなった。わたしのコンデジも画質ではスマホに敵わないが、高倍率光学ズームなど、使い勝手は悪くない。しかし、ものには買い時ってのがあるなー。
 

 
中沢さんの『構造の奥 レヴィ=ストロース論』(2024)第三章「構造の奥」を読む。驚くべき発想と、創造性。
『人が他の人と結びつくためには、お互いの心理のうちでこの互酬性が働いていなければならない。そうしなければ、人間はこの宇宙でたった一人、孤独のまま生きなければならない。この宇宙でなにかのつながりをつくりたいと思ったら、相手が人間であろうと動物であろうとかまわないが、相手にまずなにかを贈与しなければならない。すると贈り物をもらった相手は、互酬性の原理に基づいて、なにかのお返しをする(相手が動物なら好意を見せるようになるだろう)。』(p.125)
『…ここで互酬性の原理を重力の作用に比定するレヴィ=ストロースの喩えは、まことに正確で深い。互酬性には引力に似た力を発生させる原理がひそんでいる。引力は物質同士を引きつけ合わせるが、互酬性は人間同士を引きつけ、交換を発生させ、社会をつくりだす。天文学は重力の理論によって盤石な基礎が据えられている。それならば、人間科学の盤石な基礎は互酬性の理論の上に築かれることになるのではないか。私たちの求めている「構造の奥」は、この互酬性の内部に潜んでいるに違いない。』(p.127)
 もし、わたしが孤独にして誰とも結びついていかないとすれば、「社会」というものがなかなか理解できないとすれば、それはわたしに「贈与」が欠けているからかも知れない。わたしはまず、他人に何かを贈らねばならないのだ。では、わたしは何を「贈与」すればよいのか。それは、はっきりとわかっている(すべての人間がもっているものだ)。いずれにせよ、(現代社会でも)人と人の結びつきの底に(「重力作用」として)互酬性 reciprocity がある、というのは、まさに的を射抜いている感じがする。
 
『現代の天体物理学はきわめて高度なトポロジー数学を用いて、その特異点の中身を調べている最中である。それに比べれば私たちの人間科学が心の構造を調べるのに用いているトポロジーはあまりに素朴なものでしかなく、しかもそのモデルを提供してくれているのは、崩壊直前にあった双分制のような先住民社会からもたらされた、いわば人類最後の情報なのである。しかしその情報から、人間科学は心的宇宙の特異点の構造に踏み込んで行くことも可能である。それをもとにして、人類は行き先のまったく見えなくなってしまった未来への航行図を描いて行くことができるかも知れない。』(p.156-157)
 まことに、「行き先のまったく見えなくなってしまった未来」。残り時間は限られている。自分がまったく不十分なことを、痛感して已まない。
 なお、本論文では人類学の贈与論と(物理学の)重力理論の深い対比がおこなわれている、というか、そこにインスピレーションが発火しているが、元(ひよっ子の)物理学徒の目から見て、中沢さんの重力理論の理解は、きわめて正確であることをいちおう付記しておこう。
 

セージ。

芍薬
 
昼。雨あがる、曇。
 
国際情勢知ったかぶり。
 アメリカやイギリスがハマスに対して停戦条件を飲むように圧力をかけているが、この紛争以前の状態、すなわち、イスラエルによるパレスチナ人のいわゆる「漸進的ジェノサイド」と、国際社会におけるその「無視」――という状態に戻るのなら、ハマスにとっては何の意味もないことを、理解していないな。確かに「停戦」は大事だ、もうジェノサイドはやめにしなくてはならない。でも、それが「漸進的ジェノサイド」に代わるだけなら、何も変わりはない。あるいは、パレスチナ人の絶望はもっと深くなるかも知れない。
 もっとも、ハマスがもう、譲歩して、あるいは、あきらめて停戦条件を飲まないとはいえないし、そうなったらそれでまた悲劇を生むだろう(「オスロ合意」が茶番だったことがちょっと思い出される)。こういう考え方は、人命の軽視だろうか? しかし、イスラエルによる「漸進的ジェノサイド」を長年放置してきた国際社会の人間(わたしも含む)とは、いったいなんなのか?
 
 
中沢新一『構造の奥 レヴィ=ストロース論』(2024)読了。第四章「仮面の道の彼方へ」を読んだ。わたしは日本についてすら、あまりにも無知だな。
 中沢さんは、本書を「レヴィ=ストロースの主題による四つの変奏曲」といっている。中沢さんの理解するレヴィ=ストロースが、世間で流通しているそれとあまりにちがうので、本書は、編集者の働きかけがなければ、別に書かれなくてよかった、心に秘めておいてよかったというのは、恐ろしい話だ。書いてみて、著者自身にすら、「四つの変奏曲」はどれも、新鮮な革新力に満ちていると、感じられているという。ほんと、とてつもない独創性をもっていると、わたしも思うのだ。さて、わたしごときが、本書からどれくらいの宝物を、得ることができるのだろうか。

 

 
夜。
魔法少女にあこがれて』(2024)第13話(最終話)まで観る。いやー、冬アニメでいちばん話題になった作品だが…、まーはっきりいって H すぎる変態アニメだよね笑。魔法少女にあこがれるうてなちゃんは悪の組織の女幹部・マジアベーゼになってしまい、魔法少女たちに変態行為をしまくるという――しかしよく地上波放送できましたね。でも、凛としたマジアアズールが「闇堕ち」しそうになるところから、話がちょっと変わっていく。単純な「善」と「悪」の話じゃなくなるんだな(クソバカバカしくも変態的なのにはちがいないが)。水着回である最終話は、ハッピーエンドといってもいいくらい。やー、おもしろかった。でも、この作品が冬アニメの覇権作でいいの?笑
 OP、ED もよくて、毎回楽しみだった。曲、ふつうにいいし。