四方田犬彦『いまだ人生を語らず』

晴。
 
午前中はずっとぼーっとしていた。何かどれだけぼーっとしても足りなかったな。
 
昼から県営プール。冷たい水が気持ちよかった。泳いだあとのスポーツドリンクがたまらない。
しかしまさに猛暑。緑の金華山と青い空と白い雲。夏だな。
 
老母から回してもらった、四方田犬彦『いまだ人生を語らず』を読み始める。ここにはまだ人文学的教養が生きているな。わたしにないものである。しかし、これだけ書物について語られるのに、社会科学系の本がまったくない。時代に添い寝せず、いっそ、いさぎよいとでもいうべきか。それから、わたしはクラシック音楽については少しわかるような気がしている者だが、クラシック音楽については、本書の記述はむしろ軽薄でかっこつけで、底の浅いもののように思える。こんな調子で、仮にブーレーズクセナキスについて一著をものされてはかなわない。ま、わたしの読みがいじわるか、それともえらそうなことをいってわたしが何も知らないだけかも知れないが。
 
夜。
図書館から借りてきた、四方田犬彦『いまだ人生を語らず』読了。後半の「秘密について」「病について」「信仰について」「死について」は四方田さんがお好きだというモンテーニュの『エセー』のようで、しかも文章に強度があり、読み応えがあった。見事な人文学的教養とペダントリーが鏤められていて、これはとても真似ができない。軽薄才子も、なかなかやるなと思った(何様)。