日本の若者とエコグリーフと「希望」 / 『コレクション瀧口修造9』

朝、驟雨。
 
スーパー。にわか雨のせいか客が少ない。マスコットキャラのお誕生日だというアナウンスが流れてちょっと可笑しくなる。なんだそれ。創業記念日、ってことでもないようだ。
 
今朝の朝日新聞に、動物行動学者のジェーン・グドールさん(89歳)へのインタビューが載っていて、いろいろ考えさせられる内容だった。というか、内容は主に気候変動問題についてで、よくある話といえばそうなのだが、やっぱり紙面インタビューですら、インタビュイーの精神の高さが隠せないな、と。僕らは言葉が擦り切れてしまっていて、誰が何を、たとえどんな深刻な内容を語っても、不感症になってしまっており、つい冷笑やシニシズムで反応してしまう。それが(特にネットの)常態だ。
 日本の若い人たちシニシズム。やっぱり日本はちょっとちがうのかな、って思う。グドールさんは「エコグリーフ」ということをいっていた。恥ずかしながら初めて聞く言葉で、eco grief ということであろう、正確には ecological grief で世界一般には流通しているらしく、壊れていく地球環境に対する悲しみ、さらには無力感をあらわす言葉だという。もちろん、特に若い人たちの抱くそれが、問題になっているわけで、世界のどこへ行ってもこれにぶつかるとグドールさんはいうが、さて、日本ではシニシズムが中心で、grief とはだいぶ感じがちがうよね。まあそれはともかく、世界的に、若者たちはすべてがムダで、もう何をしたらよいかわからない、そういう無力感に少なからず陥っているという。ひるがえって日本はというと、社会に気候変動問題に対する関心が非常に薄い。せいぜい、SDGs くらいで、しかし日本人は何でこんなに SDGs が好きなんだろうね、悪いことではないんだが。
 グドールさんは、希望の大切さを語る。こういう高潔な人がいうと本当に心をうたれるのだが、シニシズムにまみれ、言葉の摩滅した、知性の高い我々には、「希望」といっても中身のない一概念にすぎない。ほんと、我々の直面している問題は、すべてつながっていて、根が深いのだ。わたしごときではどうしたらよいのかまったくわからないわけで。
(インタビュー)エコグリーフの若者へ 動物行動学者、ジェーン・グドールさん - 朝日新聞デジタル
 

 
昼。晴、34℃くらいだとだいぶ凌ぎやすい。
ミスタードーナツ イオンモール各務原ショップ。ハニーディップブレンドコーヒー429円。
レヴィ=ストロースの『野生の思考』を読み返し始めるか、迷ったが、図書館から借りてきた『コレクション瀧口修造9』を読んで読み終える。ジョアン・ミロ(よくホアン・ミロスペイン語由来で表記されるが、ミロ自身がカタルーニャ語で「ジョアン」と呼んでほしいと、瀧口修造が確認した)と瀧口修造の深い交流に感銘を受ける。フードコートで泣きそうになってしまった(バカだね)。しかし、わたしはまだ昨年 2022.6.23愛知県美術館での「ミロ展」へ行ったばかりなのに、もうミロの画が記憶におぼろだ。というので購入した展覧会カタログで渇を癒やしている。と、あら、「ジョアン」よりいまはさらに「ジュアン」の表記なのかな? とにかく、ミロはわたしの気質にもっとも合った画家のひとりだ。瀧口さんも、ミロを深く愛している。
 第三部は(めずらしく)イギリスの近代絵画についての文章で、正直いって、瀧口修造が全力を出す(?)にふさわしい題材ではないように思える。ブレイクについて以外は、それほど惹かれる記述がない。しかし、恥ずかしいんだが、わたしは若い頃に画集でよく観た、ラファエル前派やホイッスラーの甘い絵画がくっきりと頭に残っているんだよねー。三流だと、わかっているのだが、文学と結びついた、一種ロマン派的なところが好ましかったのだと思う。クラシック音楽でも、わたしの好みにはどうしてもロマン派も入ってしまうのだ。ここにも、わたしの幼稚さが露呈していると思わざるを得ない。

 
フードコートのとなりの未来屋書店にて濱口先生の新書新刊『家政婦の歴史』を探すも、あらず。別に家政婦の歴史にさほど興味があるわけではないが、濱口先生の新書本なら読まないわけにはいかない(わたしが読んでも何にもならないことは承知だが、仕方がないのである)。いうまでもなく先生は一流の労働法学者であり、またそれだけにとどまらない。かなりクセの強い人だが、それだけ巨きな存在であるというわけだ。ブログも愛読させてもらっている。
 
 
夜。
『【推しの子】』(2023)第7話まで観る。これは…。さすがに覇権作というか、最上級のアイドル・サスペンス(?)エンタメだな。バズった82分の長い第1話だけとりあえず観ようかと思ったが、引きが強すぎて止められなかった。まあ、明け方までかけて一気観してもよかったのだが、なんとか途中で止められた。ほんと、観ていてドキドキしたわ。OP(曲は YOASOBI の「アイドル」)も ED も最高。あんまりアニメを観ていない人でも楽しめる作品だと思う。
 ここまでは第1話と第6話がとにかく衝撃的だった。ネタバレしたらダメな作品なので、これ以上はいわない。それ以外の回も一切中だるみなし。