渡辺京二『逝きし世の面影』

薄雲が多いが、晴れかな。
 
NML で音楽を聴く。■ショパンのバラード第一番 op.23 で、ピアノはマウリツィオ・ポリーニNML)。CD で何十回聴いたかわからない演奏だが、あらためて聴いてみるとほんとにすばらしいな。力むことなく、楽々と完璧に弾き切っているし(何という美しいレガート)、攻めるべきところは攻め、大きさ深さの到達も充分。曲の構造や音色の表現も考え抜かれている。何よりも、感動的だ。まさに現代ピアニズムの頂点、モダニズムの極致だろう。ただ、もう衰退というか、崩壊が始まっているのも聴き取れる。ポリーニは、結局、突き詰めすぎて、「完璧な演奏」というのが、わからなくなってしまったと思しい。そして、うまく老いることができなかった。むずかしいものだなと思わずにはいない。

モーツァルトのピアノ・ソナタ第四番 K.282 で、ピアノはウィリアム・ヨン(NML)。第一楽章に大胆に装飾音をつけているのもおもしろいが、何よりもベースになっている「無個性なモーツァルト」がよい。ここでの「無個性」に、何ら貶下的なコノテーションがないことを強調しておこう。例えば、ピリスのモーツァルトに、「いらない個性」がないようなのに、似ているとでもいうか。ウィリアム・ヨン(1979-、韓国出身)というピアニスト、既に結構 CD 出てるな。全然知らなかった。
 
昼。
モーツァルトのピアノ・ソナタ第八番 K.310 で、ピアノはウィリアム・ヨン(NML)。第一楽章の短調のドラマティックな音楽もきちんと弾けている。第二楽章はさらに聴かせる。それにしても、第一楽章の即興的な経過的装飾音(?)には、アッと声を挙げそうになるくらいびっくりした。■シューベルトの三つのピアノ曲 D946 で、ピアノはウィリアム・ヨン(NML)。モーツァルトはちょっと措いて、シューベルトがあるというので聴いてみる。充分に合格点をあたえられる、よい演奏。でも、わたしが個人的にとても好きな、第二曲第二中間部は、正直もう一段ギアを上げて欲しかった。この曲は、とにかくここなのだ。
Schubert: Piano Works

Schubert: Piano Works

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イオンモール各務原。3Fフードコートの透明アクリル板が撤去されていた。コロナ一色だった風景も、だいぶ変わってきたな。
ミスタードーナツ イオンモール各務原ショップ。ハニーディップブレンドコーヒー429円。なんかハニーディップばかり食っている。コーヒーを二度おかわり。
 渡辺京二『逝きし世の面影』第十二章「生類とコスモス」第十三章「信仰と祭」第十四章「心の垣根」読了、これで本書すべてを読了した。読み始めたのは 2023.5.6 だから、ちょうど一月かかったことになる。感想はこれまでに書いてきたので繰り返さない。ただ、わたしは(途方もない名著である)本書を読んで喫茶店やフードコートでひたすら泣いていただけのバカであると痛感した。別に過去の日本(江戸末期〜明治初期)を理想郷だと思い、その失われた文明に対して感傷的になっただけ、ではないことをみずから信じている。その文明が滅びることは歴史の必然であったし、それはよし悪しを超えたことだった。
 いまの日本では、インテリも(目覚めた)俗衆も、リニア(線型的)な言語的理性を称揚して倦むことを知らない。そして、感情を取るに足りないものとしながら、一方で恐ろしい感情的貧しさ、幼稚さの中にいる。本書は、それに対してひとつのアンチテーゼを突きつけるのであり、その意味で現在にあってちっとも汲み尽くされていない、まさにアクチュアルきわまりない本なのだ。 
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夜。
寄宿学校のジュリエット』(2018)第12話(最終話)まで観る。対立集団のトップどうしの恋愛とか、『ロミオとジュリエット』や『ウエスト・サイド・ストーリー』かよって。でも、悲劇ではありません。しょうもなさすぎるラブコメ、アホくさくて脱力しながら観てた。駄作、だけれど、こういうのキライではない。透明感のある作画はよかったな。OP、ED ともに大したことないけれど、一度もスキップしなかったのだから、これも作画のおかげか。評価を見てみたら…皆んな寛容だな! 高評価たくさんで、女の子がかわいければいいのか? いや、それでいいんだよなあ、おまいらは。