「Karajan 1960's」落手

いやあ、やってきましたよ、「Karajan 1960's」が。どれから聴こうか迷ったが、好きなベートーヴェン交響曲第四番(1962)から聴き始める。ワクワクしながら待っていたら、曲が始まって、大袈裟でなく鳥肌が立ちましたね。何てオーケストラがよく鳴っているのだろう! ははあ、これが最盛期のベルリン・フィルか。後年はカラヤンの楽器になってしまって、まろやかすぎてちょっと新鮮味がなくなっていたが、ここではかなり鋭角的な表現も聴かれる。カラヤンとの最高のコンビだ。カラヤンも色々と面白いことをやっていて、すごく勉強しているのがよくわかる。超一流の芸術というものを目の当たりにしたという感じだ。さらに聴きますよ。
 ベルリオーズ幻想交響曲(1964)を聴いてみる。普段はあまり聴かない曲だが、カラヤンがどう演奏するか楽しみで選んでみた。意外に辛口の演奏で、緊張感が張り詰める。オケがまた凄いし、指揮者の統率力も完璧。しかし、じつは第二楽章の甘いワルツで、不覚にも思わず胸が一杯になってしまった。こんなに切なくメロディを歌わせてはたまりませんよ。
 フェラスのヴァイオリンを聴こうと思って、迷ったのだがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(1967)にする。意外にも遅めのテンポで、じっくりと聴かせる演奏だ。でも、第一楽章はちょっと遅すぎるのではないか。終楽章ははずむような感じがいい。オケの音は、なめらかなカラヤンサウンドに段々なってきている。この曲、ベートーヴェン中期の一番充実していた頃の作品だが、第一楽章の主題が単純すぎるように、同時期の作品に比べ、多少聴き劣りがするような気がする。まあ、一流の曲には勿論ちがいないわけだが。
 ブラームス交響曲第四番(1963)を聴く。カルロス・クライバー盤に匹敵する、超辛口の演奏! 演奏のスケールはクライバーを超えている。特に終楽章のパッサカリアは圧倒的だ。全体のレヴェルは、突き抜けているものを感じる。あらゆる芸術の中でも、最高度の達成だろう。
 ふう、カラヤンばかり四時間くらい通して聴いていたので、疲労困憊でふらふらという感じ。なお、録音とリマスタリングも素晴らしい。現在のものと比べてもまったく遜色ない。安心して聴ける優秀録音である。

Karajan 1960's: the Complete DG Recordings

Karajan 1960's: the Complete DG Recordings