シャイーの指揮するベートーヴェン

シャイーの指揮するベートーヴェンを聴き始める。最初は交響曲第三番「英雄」。聴き始めて直ぐ、これはマーラーの時のような相性の良さはないことがわかる。まず、全体的にテンポが速い。印象としては、爽やかなベートーヴェンで、とても表現主義的だ。これはマーラーに相応しいアプローチで、ベートーヴェンだとどこかせわしなく聞こえてしまうのも事実である。しかし、つまらないかと云われると、そう断言し切るのもどうかとも思うが。ただ、ベートーヴェンはイン・テンポで元気に演奏すればいいというものではなくて、本当は(誤解を招くかも知れないが)大人のための音楽で、フルトヴェングラーなどを聴けばわかるように、超カッコいい筈なのだ。
 しかし、この曲から聴き始めたのは、意地悪だったかも知れない。エロイカ交響曲は、ベートーヴェン交響曲の中でも第一の傑作であり、それはベートーヴェン本人も認めているようなものだった。実力者中の実力者しか、上手く演奏できない曲だと云っても過言ではないかも知れないから。まだまだ、シャイーのベートーヴェンは聴きますよ。
※追記 検索してみると、皆さん絶賛ですな。しかしまあ、評を読んでいると、言いたいことはわかる。一口で言うと、「新時代の、都会的センスの演奏」ということだろうか。確かにそう云えるだろう。ところでこの全集、ティーレマンのそれと重なって発売されたようで、色々比較されたらしい。ほう、ちょっとティーレマン(これまではいいと思ったことがない)も聴いてみたいな。

ベートーヴェン:交響曲全集

ベートーヴェン:交響曲全集

交響曲第四番も聴いてみる。これもテンポは速く、フレージングもちょっと乱暴だな、などと思いながら聴いていたのだが、第三楽章あたりから「おや?」と思い始めた。どうもシャイーのベートーヴェンに慣れてきたようである。なかなかおもしろくなってきた。ただ、こんなことを云うのは傲慢だと承知しているが、シャイーはベートーヴェンを指揮するには、器の大きさがちょっと足りないような気がする。落ち着きがないと感じることが少なくない。よく云えば、きびきびしているなどとなるのだろうが。この曲なら、第三楽章と終楽章は、それが悪い方には出ていないのだと思う。さて、とは云え、次はどの曲を聴こうかな。