晴。
音楽を聴く。■バッハ:パルティータ第三番、第一番(ギーゼキング)。現代ではあり得ない演奏。素っ気ないし、ミスタッチはあるし、気持ちに指がついていっていないところも多々あるし、まったくモノラル録音時代の演奏なのだが、聴く価値がないかと云えば、その正反対なのが不思議。第三番のサラバンドなど、めちゃめちゃに速すぎたりするのだが。グールド以上の怪演。しかし第一番などは最上級の演奏なのだから、じつに妙だ。ギーゼキングのザハリッヒさには、何か突き抜けたものを感じる。■チェリビダッケの指揮するベートーヴェン、交響曲第七番を聴くが、申し訳ないけれど、どの楽章も最後まで聴き通せない。テンポが遅く、上品すぎる。それに、ベートーヴェンとしては器が小さすぎる。ベートーヴェンではなく、チェリビダッケを聴かせるに過ぎない。■口直しというわけではないが、ベートーヴェンの同じ第七番を、カルロス・クライバーの指揮で聴いてみる。これこそベートーヴェンの生命力ではあるまいか。踊っているかのような、生き生きとした音楽だ。僕はクライバー崇拝者ではないが、このアレグレットを聴かされて感動しないわけにはいかない。やはり、この男はちがうと、つい思わされてしまう。終楽章は、ベートーヴェンの中でも最も音楽性に乏しい部類の、単純な曲であるが、クライバーは何と舞踏的であることか。クライバーに関して面白いのは、ポリーニと大の親友同士だったこと、それから、カラヤンを高く評価していたこと。これらはじつに含蓄のあるエピソードだと思う。ちなみに僕は、七〇年代のポリーニと、六〇年代のカラヤンを高く評価する者である。それから、クライバーの音楽づくりは、基本的にイン・テンポでわかりやすいが、じつは意外な細部の面白さにも満ちていることは指摘しておきたい。この曲を聴いていても、こんなところがあったのかと思う部分が、多々あった。
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図書館から借りてきた、内田樹『態度が悪くてすみません』読了。いつも通り、内田樹は自分にはどうでもいいにもかかわらず、やはりおもしろい。自分はどちらかと云えば、内田樹のように口がペラペラ回る奴は好きではないのだが、確かに内田はうるさいけれど、許す。何故かと云うと、自分は凡人で、内田は変人だから。凡人はいくらでも居るが、変人は滅多にいない。絶滅危惧種である。内田を、エスタブリッシュのように扱ってはいけない。彼のよさが死んでしまう。内田樹は、理屈っぽく変なことを言う、ウイルスなのだ。大したものである。
態度が悪くてすみません―内なる「他者」との出会い (角川oneテーマ21)
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