石垣りん『朝のあかり』

晴。
鬱気を飲み込んで寝たため、ひさしぶりに好ましい、なかなか内容のあるおもしろい夢を見る。未知の田舎の町が舞台の夢だった。昭和の雰囲気。詳細は思い出せないが、モノクロマティックで、不穏さに満ちていた。
 
早く起き出す。蝉しぐれがすごい。
うとうとしていて一声にからりとすっきりする。廓然たり。
 
スーパー。いつもより遅い時間に行ったせいか、やたらと混んでいた。
朝から酷暑。日差しが強く照りつけ、影の部分と画然としている。カワトンボたち、ゆらゆら飛ぶ。
 
昼。
散髪。すっきり。いつも目を閉じてうとうとしているのだが、テレビのワイドショーの音声を延々と聞かされてうんざりする。何の興味もない札幌の殺人事件について、妙に詳しくなったわたくし笑。
 

クマゼミ。シャーシャーって鳴くやつ。翅(はね)が透明だ。
 
 
図書館から借りてきた、石垣りん『朝のあかり』読了。承前。文庫本オリジナルのエッセイ集で、最近読んだ本の中ではもっとも中身のあったものだと思う。これほど心理が細やかで、複雑な文章は、めったに読んだことがない。戦前に14歳で銀行に就職し、「ああ、男でなくてよかった。女はエラクならなくてすむ」と思ったという。これはむしろ辛辣な眼だ。クソのわたしなんぞは、この歳になってすら、エラクなりたいと思う気持ちをいまだに解体し切れないのではないかと、恥ずかしい。そして石垣さんは、定年まで働き、自立して生きた。生活の中からほんの数冊の詩集を残し、いまでは昭和を代表する詩人のひとりと見做されている。本書のエッセイを読むと、いわずとも知れたことには寡黙であり、いうべきと自分が思うことは、静かにだが確実にいってのけている。まさに文学者として、見上げた態度であった。2004年没、享年八十四。

 
NML で音楽を聴く。■ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第二十五番 op.79、第二十四番 op.78、第三十番 op.109 で、ピアノはフリードリヒ・グルダNMLCD)。
 
 
夜。
PSYCHO-PASS サイコパス』第8話まで観る。かなりグロいな。哲学・文芸趣味(例えばキルケゴール、例えばシェイクスピア)もある。なかなかとんがった作品。