息をつく / 種村季弘『詐欺師の勉強 あるいは遊戯精神の綺想』

曇。

種村さんの『詐欺師の勉強』の続き。いったいどんだけかかって読んでんだよ。でも600ページを超えた。あと60ページくらい。
 いまの時代において、希望を失わずにいられるのはむずかしい。空気がどんどん希薄になり、窒息しそうである。論理パズルを解くばかりで、思考がない。感情が幼稚である。言えそうなことは誰か言っているように思われてくる。誰もが何らかの専門家であり、その専門家たるところ以外では素人にすぎない。少数の原理が世界を覆い尽くそうとしている。とか何とかいった上で書くと、種村さんはわたしに正気を回復させてくれるところがある。そんなことを聞いたら、種村さんは驚いてしまわれるだろうが。

はぎおく。しふ。前垂れ。スモ。まるみら、エク・トン。ぬなわら。ニモ。ケセレンサ。ナグワディン。クワ、センサ、凪アカディン。

結局のところ、断片ではダメだ。雁字搦めに体系化された記号の支配から逃れることができない。世界を一望できる場所は、リジッドな体系化に陥らせるとは限らない。万物はすべてゆるやかに関係し合っており、全体として少しづつ変形しながら運動している。論理による固定化は、死である。

啓蒙の罠に注意せよ。それはあなたに特権化された知識を与えるように思われるが、それは罠以外ではないのである。

昼から小雨。
図書館。和菓子餅信。肉屋。

餅信のマロン大福を食う。めっちゃうまい。


図書館から借りてきた、種村季弘『詐欺師の勉強 あるいは遊戯精神の綺想』読了。これまで読んだ種村さんの本でいちばんおもしろかった。雑多な本が好きだ。種村さん、もっと読みたいな、図書館にあったら借りてこよう。

僕は文庫本の人なので、書架を見ると、種村さんの著書・訳書は文庫本で20冊あまりは読んだようだ。でも、その中に雑多な本はほとんどないし、そういや最近は種村さんの文庫本、ちっとも出ないなあ。ダメな時代である。西洋文学関係のエッセイ集くらい、文庫オリジナルでどこか出せばいいのに。ああ、種村さん自身が遺言で禁じたのだっけ。

夜。
『ゴールデンタイム』第12話まで見る。