雨。
今日から暫くの間、早朝出勤。
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阿部和重『ピストルズ(下)』読了。長大な小説なのだが、特にこれといったクライマックスはないように思う。まあ云ってみれば、本巻はずっとテンションが高いから、ことさらの盛り上げは必要ないかも知れない。――しかし、本書をどう表現したらいいのか。迷わざるを得ない。まず、本書の舞台は、これも長大な小説だった『シンセミア』と同じ、著者の郷里の地方都市・神町である。『シンセミア』の細部は忘れてしまったのであやふやだが、登場人物も一部かぶる。その神町の旧家・菖蒲家が本書の中心であり、菖蒲家では、一二〇〇年にも亙って、当主が植物の麻薬性を利用する、不思議な秘術を伝えてきたとされる。この辺りの説明で読む気をなくす人もいると思うが、実際に設定は(敢て?)マンガのようにチープだ。術の最後の継承者とされるのが、菖蒲家の四人姉妹の末娘・みずきであり、先代の継承者であるみずきの父親、その父(みずきの祖父)の世代間の、秘術をめぐる争いが蜿蜒と描かれる。結局本書はそこに尽きているのだが、それを面白く思えるかどうかということなのだ。本書の中心は、また麻薬によるトリップと秘術の全能感の物語だとも云えるが、筒井康隆の文庫解説の言うがごとく、本書自身が異様なトリップ感をもたらすと云えば、大袈裟ではあるが云えないこともない。最後の方では、著者おなじみのロリコン中年も出てくるし、(著者にしては)それほどひどくはないが最後は暴力で〆られる。小説には、とにかく思いつきで様々なものが放り込まれており、カオス的なノイズになっている感じだ。文章は確かにパワフルで、読んでいて疲れるほどの強度をもっており、言葉のみで壮大な空中楼閣を築き上げてしまう点、並の小説ではないが、読み終わって徒労感も感じてしまったと、正直に述べておこう。何のために、なんて考えたら読めない小説です。
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