日曜日。曇。寒くなった。
七〇年代の、アルゲリッチのショパン・アルバムを聴く。まず二十四の前奏曲だが、まるでこの場で音楽が生まれたかのような、瑞々しい演奏だ。即興的で詩的というか、しかしこの曲の演奏で「詩的」というのは、じつはありふれているとも云えるのだが、そういったものとの違いは、ここには荒々しいまでの強靭なテクニックがあることである。技術的にどんな極端な演奏でも、ほぼ自由に弾いているところがすごい(ただ、第十六番はちょっと指が回らなくて、アルゲリッチにしてはめずらしい)。ピアノの厚みがあって輝かしい響きも、魅力的だ。即興性と構築性を兼ね備えた、アルゲリッチを代表する名演と云っていいと思う。
次いでピアノ・ソナタ第二番を聴く。これは二十四の前奏曲ほどではない。自分などはどうしてもポリーニの旧盤と比較してしまうのだが、それに比べるとどうもおとなしい感じだ。曲が微分的に弾きにくくて、苦労している印象である。葬送行進曲なども、彼女にしてはじつに平凡。終楽章も角のとれた、甘く丸い演奏だ。もちろん、これも名演という人がいても不思議ではないことは、わかるのだが。
それから、前奏曲第二十六番というのは、初めて聴く曲だ。悪くない小品。
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図書館から借りてきてもらった、中央公論特別編集『吉本隆明の世界』読了。漫然と読んで、山口昌男はダメだなあとか平凡な感想しか出てこないが、やはり自分は吉本さんが好きなのだなということは、再確認した。政治の季節が終った後の世代である自分たちが、どれほど吉本隆明を読み込めるか、むずかしいところではあろうが。本当は、我々の世代を解剖した「ハイ・イメージ論」のシリーズを、きちんと読み込まねばならなのだろう、とは個人的に思う。以前に読んだきりで、そのままになっているのだ。
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別に小説家を貶したいわけではないですよ。長嶋有は、優れた小説家だと思います。であるが故に、気になるのだった。小説に出てくる固有名詞は、自分の世代の感覚に近いしね。
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