バルビュス『地獄』/戸田盛和『宇宙と素粒子30講』、またスピンについて

晴。寒くなってきた。
アンリ・バルビュス『地獄』読了。主人公は我々であり、我々はみな窃視症患者なのかも知れない。AVとか、そういうものでしょう。それにしても、「この小説は下劣な読者から猥小説の一種としてもてはやされたきた」と訳者は述べているが、どう考えても、それは仕方のないことではあるまいか。これが哲学の下に書かれているというのなら、AVだって哲学があると云ってもいいと思う。

地獄 (岩波文庫 赤 561-1)

地獄 (岩波文庫 赤 561-1)

戸田盛和『宇宙と素粒子30講』の後半(素粒子)を拾い読みする。ディラック方程式に自然にスピンが入ってくるのは、実に不思議だなあ。ディラック方程式の(第二)量子化についても、少し書いてある。また、朝永先生の超多時間理論のほんのさわりが説明されているが、これは自分にはむずかしかった。それにしても、全体的にまったく(殆ど驚異的なまでに)わかりやすく書かれてある。この「30講」シリーズは、自分には有難いです。まだ買っていないのも揃えよう。戸田先生が場の量子論も解説して下さると良かったのに。
宇宙と素粒子30講 (物理学30講シリーズ)

宇宙と素粒子30講 (物理学30講シリーズ)

スピンついでに、ランダウ=リフシッツ小教程の第五章や、シッフの第十章などを読む。シッフは二十年ぶりくらいに開いたけれど、いろいろなことが書いてあるなあ。書き込みがしてあったりして、ああ勉強したのだなあと思う。そんなこんなで、つい読み耽ってしまう。ちょっと疲れたので、朝永先生の『スピンはめぐる』はむずかしそうだから、後日にまわす。
量子力学―ランダウ=リフシッツ物理学小教程 (ちくま学芸文庫)

量子力学―ランダウ=リフシッツ物理学小教程 (ちくま学芸文庫)

量子力学 (上) (物理学叢書 (2))

量子力学 (上) (物理学叢書 (2))

量子力学 (下) (物理学叢書 (9))

量子力学 (下) (物理学叢書 (9))

Eテレの、坂本龍一「スコラ」を視る(録画)。「古典派」最終回はベートヴェン。レクチャーを受けた後「運命」を聴くというのは、衝撃。最小の動機による堅固な構築と推進力には、驚きを新たにする。けれども、晩年の弦楽四重奏曲の底知れぬ深みも、またベートヴェンなのだ。最後に「第九」の合唱部分が流れると、思わず感動してしまった。――生徒たちのソナタの作曲も最後。まあ、そりゃ皆素人だが、音楽を創るというのは面白いね。そういう勉強をしてこなかったのは、残念だなあと思った。
 「ドビュッシー、サティ、ラヴェル編」第一回も視る。ベートヴェンからいきなりドビュッシーか。たいへんな違いだな。「塔」を楽譜付きで聴いたが、これは面白い。そのうち「フランス印象派」たちの楽譜も手に入れよう。ドビュッシーが影響を受けたというガムランを実演したが、これもなかなか。そして生徒たちとガムランの共演が至極面白かった! ガムラントロンボーンや、ベースやヴァイオリンと即興で合わせるという。坂本教授や浅田教授も楽しそうだった。次回も楽しみ。