大澤真幸『近代日本のナショナリズム』/芥川龍之介『戯作三昧・一塊の土』

曇。
イオンのJTBと本屋。
大澤真幸『近代日本のナショナリズム』読了。どの論文も刺激的だが、とりわけ第五章の「現代日本の若者の保守化?」が切れ味抜群だ。自分に近い世代が分析の対象になっていることもあって、したたか感心させられた。現代日本の若者たちは、印象からいうと保守化しているように見えるのに、各種統計ではどうしてそれが確認できない(むしろ反対を指しているようにすら見える)のはなぜか、という疑問を取り扱っている。著者の武器は、「アイロニカルな没入」というものだ。これは、例えばスターリン主義下のソ連において、個々のソ連国民は「だまされて」などいなかったのに、全体として見ると「だまされて」いるとしかいえない状況だった、というようなものである。引用する。「一方で、[現代日本の若者たちは]『日本は一流国だと思うか』とか『もはや外国からまなぶべきものはないと考えるか』と正面から問われれば、そんなことはない、それほどでもないと答え、醒めた意識を示す(アイロニー)。しかし、他方で、彼らの行動、どんなマンガやアニメに熱狂し、ネットにどんな書き込みをするかといったことに示される彼らの行動を見れば、そこには、ナショナリスト的な没入を認めないわけにはいかない。」(p.214)

近代日本のナショナリズム (講談社選書メチエ)

近代日本のナショナリズム (講談社選書メチエ)

芥川龍之介戯作三昧・一塊の土』読了。とても上手い短編ばかりなのだが、結末がネガティブなものが殆どだ。わずかにも、結末が肯定的である、「お富の貞操」があざやか。
戯作三昧・一塊の土 (新潮文庫)

戯作三昧・一塊の土 (新潮文庫)