佐藤泰志『大きなハードルと小さなハードル』/鹿島茂『セーラー服とエッフェル塔』

曇。
佐藤泰志『大きなハードルと小さなハードル』読了。「暴力的」な、なまなましい小説群だ。生が(「性」も)過剰で、主人公たちがそれを持て余している、とでもいうような。

大きなハードルと小さなハードル (河出文庫)

大きなハードルと小さなハードル (河出文庫)

鹿島茂『セーラー服とエッフェル塔』読了。鹿島さんはエロ話が好きだなあ。オヤジですね。しかし、「黙読とポルノ」の一篇を読んで、デリダのフォノサントリスム批判がようやく腑に落ちたのだった。引用しよう。「ようするに、アルファベットで書かれたテクストとは、口と声を使って行われた弁舌や説教を『そのまま』記録するテープレコーダーのようなものであり、テクストを『読む』とはそのテープレコーダーのスイッチを入れるに等しい行為だったのである。テープレコーダーとちがうのは、再生の声が自前のものだということだけであり、アルファベット文字はあくまで元の音声を忠実に復元するための再生『装置』にすぎなかったというわけだ。」(p.188)そういうわけだから、本書で紹介されているような、例えばイタリア語風の綴りで書かれたフランス語というような珍妙なものでも、意味が通るというわけなのだ。
セーラー服とエッフェル塔 (文春文庫)

セーラー服とエッフェル塔 (文春文庫)