ホラー・ドラコニア少女小説集成『狐媚記』/大澤真幸『近代日本思想の肖像』/志賀浩二『位相への30講』

日曜日。雨。霰が降ってきたのには驚いた。寒いはずだ。
風邪を引いているのと区別がつかないくらい、花粉症がひどい。鼻水は常時出まくりだし、目もしょぼしょぼする。こんなにひどいことはこれまではなかった。今年は一般には、飛散量は少ないらしいのに。
カルコス。
平凡社ライブラリーの「ホラー・ドラコニア」のシリーズ第三弾『狐媚記』読了。挿画は鴻池朋子。このシリーズのためのブレイクスルーになったという、一〇三頁のランドセルをした小学生の女の子(尻に狐のしっぽが生えている)の絵、いいですねえ。澁澤龍彦の晩年の綺譚集、もう一度読んでみないといけないな。

大澤真幸『近代日本思想の肖像』読了。単行本『思想のケミストリー』の文庫化。これは面白かった。前は大澤の論考は、読んでいるときは興奮させられるが、いまひとつ後に残らないという感じだったが、本書はなかなかわかりにくかったのに、段々おもしろくなってきた。たぶん、こちらの読み方が変ったのだと思う。本書では文学を多く扱い、大澤は社会学者というよりは、文芸評論家のように書いている。とりわけ漱石宮沢賢治村上春樹を論じた文章が興味深かった。「猫の事務所」と「よだかの星」の違いは、「銀河鉄道の夜」初期形の「ブルカニロ博士」にあたる存在がいるかいないかということにある、というのなど、ハッとさせられた。
近代日本思想の肖像 (講談社学術文庫)

近代日本思想の肖像 (講談社学術文庫)

ようやく志賀浩二『位相への30講』読了。これはかなり丁寧に読んだ。先に距離空間が出てきて、最後に位相空間という書き方である。距離空間の方が具体的な内容が豊富で、自分にはこちらの方が面白かった。一昨日の記事の、第30講のメモのところにも書いておいたが、結局加算基をもつ正規空間でありさえすれば、それを の部分空間(もちろん距離空間)と見做すことができ、距離が導入できるというのは、興味深い。
 それはともかく、もちろんすべてを理解できたわけではないが(とりわけ、ベールの定理のあたりがむずかしかった)、じつに楽しい読書になった。志賀先生のファンになりそうだ。先生の「30講」シリーズ、もっと読んでみよう。
位相への30講 (数学30講シリーズ)

位相への30講 (数学30講シリーズ)