晴。
大澤真幸『夢よりも深い覚醒』読了。大震災、特に原発事故について根源的に考えた書物である。著者らしく、議論の半ばは相当に抽象的なものだ。しかし、原発事故には文明論を誘発する根源性があるのだから、それは必要なことでもあろう。ほとんど論理に淫している(というのは、西欧語に翻訳すれば無意味な形容であろうが)といいたいほど、著者は合理的に語ろうとする。
しかし、ともまた思う。著者はロールズや中西準子の議論を基にして、将来の世代に対する「責任」というものを基礎づけようとするのだが、このような倫理の基礎付けは、却ってあやういような気もする。将来の世代に対する責任など、当り前のこととしては、蒙昧主義的と非難されるのであろうか。
それに関するようなことだが、最近個人的に、基礎づけられた合理的な議論と、(小林秀雄的な意味での)「常識的な」「何となく」落着する「議論」(というような「議論」というのは、これまた西欧語ではあり得ないだろう)の接合が、いかにあるべきかということが、気になっている。日本的に「空気」で決まるだけではダメだし、かといって、西欧的な「合理性」だけでも、うまくいかないことがある。基本的には「合理的」でなければならないが、一神教のように神が究極の基礎になっていないのも、日本の可能性のような気がする。
話が脱線したが、本書は読むべき本だと云っていいと思う。大震災から既に一年経ったのだから、かかる根源的な考察は、もっと現れてしかるべきであろう。
- 作者: 大澤真幸
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近頃思うのだが、果して世論調査って、どれほどやる意義があるのだろうか。皆、(自分もそうだが)深い考えもなく、質問に脊髄反射的に答えているだけなのではないか。それだけでなく、質問の仕方によって、答えにほとんど決定的なバイアスがかかるし。実際に新聞がやっているとおり、世論調査の数字を自在に操ることなど、質問の仕方でどのようにもなる。このような数字に一喜一憂するなど、馬鹿げた話である。