橋爪大三郎、大澤真幸『ふしぎなキリスト教』

晴。
プール。イオンと未来屋書店

橋爪大三郎大澤真幸の対話篇『ふしぎなキリスト教』読了。話題の本だけあって、とても面白かった。お薦めかどうかと問われたら、文句なくお薦め本だと答えたい。楽しく読んでいくうちに、相当に詳しい、キリスト教に関する知識が得られるにちがいない。自分個人には、ユダヤ教イスラム教とキリスト教の違いについて、キリスト教には宗教法がないというのは、目からウロコの指摘だった。実際、西欧で重要になってくるのは、ローマ法であった。
 ただ、云っておくべきだと思うのは、本書はキリスト教の知性による理解であり、宗教の内在的な把握ではないということである。もちろん、それがプラスになっている点も多いだろう。気になるのは、橋爪氏は恐らく何の宗教も信じておられないようにどうしても見えてしまうが、そのような人物が「現代の日本で、最も信頼できる比較宗教学者」(p.6)であっていいのか、ということである。そこが、いかにも日本的な光景であるように見える。大澤氏によれば、橋爪氏はその著書の中で宗教を定義して、「宗教とは、行動において、それ以上の根拠をもたない前提をおくことである」(p.329)と云っておられるそうであるが、このような宗教の定義は、極めて底の浅いものではないだろうか。ここから出てくる学問など、高が知れたものだと云ってしまってはいけないだろうか。
 まあ、本書はじつは、そのような定義が隅々まで貫徹されたものではない。そこが救いである。本書が、キリスト教について我々がいろいろ考える切っ掛けになれば、それでいいのだと思う。その程度には、本書は面白く有益に出来ているのではないか。

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)