中野麻美『労働ダンピング』

曇。時雨。
中野麻美『労働ダンピング』読了。多くの企業のあり方が、いかに労働者を安く、長時間働かせることができるか、ということになってしまっている。基本的な理念がおかしいのだ。真っ当に働きながらも、ささやかでも人間的な暮しができないというのは、根本的に間違っている。理念が間違っているため、労働者に良かれと考えて作られたアーキテクチャーが、逆に労働者の生活を苦しめることになっている。例えば本書にある通り、男女雇用機会均等法は本来、「何時間労働から解放されて、自分のための自由な時間を確保できる」ために作られたのだが、実際には、「女性が男性と同じように働けないのはおかしい」として、女性の労働条件悪化のために「貢献」しているのだ。企業が労働者を貧困化せしめる目的で使っている、労働者派遣法はいうまでもない。これも元々は、労働のあり方の多様化を進めるという目的で導入された筈だった。間違った理念に拠る、アーキテクチャーの恐しさである。

労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)

労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)