廣川洋一『ギリシア人の教育』

晴。
W杯ギリシャ戦、日本は輝きを失っていた。あの日本サッカーはどこへ行ったのか…
音楽を聴く。■シューベルト交響曲第一番(アバド)。

Symphonies

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廣川洋一『ギリシア人の教育』読了。新書なので概説かと思ったら、意外と専門的だった。第一章の冒頭など「一般教養(パイデイアー)とは何か」というもので、アレテーだのパイデイアーだのピロソピアーだの、なかなか小難しい。全体としては、アテネで学校を開いたプラトンとイソクラテスの教育理念の記述が目的である。プラトンはともかく、イソクラテスについてはあまり知られていないし、自分もよく知らなかったので、これは興味深かった。プラトンは「ドクサ」よりも「エピステーメー」を重視するのに対し、イソクラテスはむしろ「ドクサ」を重要視したというのは、ちょっと不思議な感じがした。今の感覚だと、もちろんプラトンが正しいということになろうが、イソクラテスは何故に「ドクサ」を重視したのか。そのあたりは本書を参照して頂きたい。それにしても、イソクラテスの著作は結構残っているようだが、ほぼすべてが日本語で読めるプラトンと比較して、日本語でどれほど読めるのだろうか。自分はたぶん一冊も読んだことはないと思うが、本書を読んでみるとちょっと目を通してみたくなる。
 あと、これからというところで本書は記述が終っているので、何だか尻切れトンボのような気がする。どうせなら、この続きも読んでみたいように思われた。まあ、著者の専門書に就けばよいのだろうが、新書あたりでどうでしょうか。実際にプラトンとイソクラテスの教育理念は、その後どうなったのかとか、ラテン世界におけるギリシアの教育理念とか、色々ありそうであるが。いや、そこまで読まないかね。
ギリシア人の教育―教養とはなにか (岩波新書)

ギリシア人の教育―教養とはなにか (岩波新書)