晴。
いまのわたしたち日本人、ほんとポンコツでダメだねえ。精神の全領域で底が浅く、学者から我々クズまでただマニアックであるにすぎない(それで博知であるとかんちがいしている)。消化力、自分の血肉にする力に乏しい。特に表面に出ている、人気のある人たちの薄っぺらさ。感情が貧しい。これはという人ももちろんいるが、悪貨に駆逐され、全然目立たない。
NML で音楽を聴く。■ベートーヴェンの交響曲第三番 op.55 「英雄」で、指揮はヘルベルト・フォン・カラヤン、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(NML)。1961年の録音。この頃のカラヤンの音は、ザラザラしている。曲も演奏も、西洋古典音楽のメインストリームの中の、最高到達地点のひとつであることは、申すまでもない。このカラヤンが、70年代になるとまた変わってくる。
昼。曇。
■ハイドンの弦楽四重奏曲第五十四番 Hob.III:69 で、演奏はプラジャーク・クヮルテット(NML)。■ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第二十二番 op.54、第二十七番 op.90 で、ピアノはファジル・サイ(NML、NML、CD)。■ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」で、指揮はシャルル・デュトワ、モントリオール交響楽団(NML)。
#
U-NEXT で山田太一作『冬構え』(1985)を観る。『ながらえば』に続いての視聴で、これも主演は笠智衆。99分。東北観光宣伝みたいなドラマ作りで、笠智衆がひとり旅をしながら無頓着っぽく大金を殆ど捨てていくうち、彼が何をしようとしているか視聴者にすぐわかるようになっている。でもやっぱり、長く病床にいるかつての同僚を訪ねて話すところは、わかっていてもうるっときた。意外なラストも見せる、ただ、これは肯定的な終わりなのか、ちょっとわかりにくいが。主人公は、どちらを選んだのだろうか。いずれにせよ、これはさらにいまアクチュアルな問題になっている。
若き岸本加世子の頭のカラッポなバカ女みたいな演技が、とっても印象的だ。いまこんな造形の女をドラマに出したら、女性への侮辱だってことになりかねないが。
夜。
『色づく世界の明日から』第8話まで観る。充実しているから、一話が長く感じる。ふつう、おもしろい作品だと、時間が過ぎるのが速いっていうけれど。ほんと、この作品、大好き。
美しい独特の作画だけでなく、いろいろ凝っていて、例えば主人公である瞳美(ひとみ)の歩き方だけちょっとちがい、少し足先が内を向いていて、歩幅が小さく、前のめりっぽく歩くように描かれている。だから、歩き方だけで瞳美ってわかるとか、細かいよね。それが彼女の内向的な性格によく合っている。
三組のラブストーリーとしても、直接的な表現はまったくなくて、繊細な心理描写がされている。瞳美が未来へ帰ることができるかも、彼女の恋愛心理ときっと関係してくる筈だ。
OP曲のハルカトミユキ「17才」もなかなかいい。作品の静けさにぴったり。
なお、このアニメ、今月いっぱい、公式から YouTube で全話無料公開されているので、よろしかったらどうぞ。まあ、わたしは配信で観ているんですけれど。