プーシキン『スペードのクイーン/ベールキン物語』/河出版日本文学全集08

晴。昨日から寒い。
音楽を聴く。■バッハ:イギリス組曲第三番 BWV808(ルセ、参照)。美しく力強い演奏。■■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第九番 op.47 (ズーカーマン、バレンボイム参照)。いわゆる「クロイツェル」。第二楽章の変奏曲が好きだな。若きバレンボイムが才気に満ち溢れている。

図書館から借りてきた、プーシキン『スペードのクイーン/ベールキン物語』読了。望月哲男訳。すべて既訳で読んでいて、これまでプーシキンにはいい訳が多いと思うのだが、本書もその列に加わるべき名品であろう。プーシキンって、エンタメとしても極上なのだよね。とにかく読んでおもしろいという、素朴な読み方をしたが(まあいつもこれである)、訳者解説で紹介されている数々の「深読み」みたいなことがされているのも、プーシキンのおもしろさ故だろう。まあ殆どが「深読み」すぎて眉唾ものだとは思うが、読み巧者というのはこういうことがしたくなるのだろうなあ。『エウゲニー・オネーギン』もこの訳者の訳で出るといいと思う。

スペードのクイーン/ベールキン物語 (光文社古典新訳文庫)

スペードのクイーン/ベールキン物語 (光文社古典新訳文庫)

図書館から借りてきた、河出版日本文学全集の『日本霊異記』『今昔物語』『発心集』を読了。町田康訳の『宇治拾遺物語』は最高だったが、これらもなかなか読み応えがあった。本が机に立てられる分厚さであるが、こんなに速く読めるとは。訳者の大胆な選択が編者のお手柄ですね。
たまたま You Tube を漁っていて、仲道郁代さんのピアノ演奏をまとめて聴いてみた。一時間くらいは聴いたと思う。最初はまったく否定的に聴いていたが、ショパンの幻想即興曲の演奏あたりからだいぶ考えを変えた。これ、メジャーリーグの野球と日本のプロ野球の関係に近いものを感じたというか。確かに日本野球は劣るのだが、いやちょっと待てよと。仲道郁代さんはある意味典型的な日本人ピアニストで、ちょっと聴くといかにも個性がないように感じる。西洋人のピアニストは、たいていはっきりとした個性があって、自分はこの曲をこう弾きたいんだというのがこちらに伝わってくるものだ。仲道さんは、そうではない。確かに無個性な感じもするのだが、聴いていると(いい演奏では)曲のよさは確実に伝わってくるのだ。むしろ、極端なことを云うと、ピアニストの個性などは邪魔なようにまで、感じられないこともない。上にも書いたが、色いろ聴いた中では幻想即興曲の演奏がいちばんよかった。いい曲だと思うでしょう?(AM1:07)