晴。
音楽を聴く。■ベートーヴェン:交響曲第七番(カルロス・クライバー、参照)。この曲はベートーヴェンの通俗曲だが、時々聴きたくなる。クライバーは古典的な演奏。しかし、終楽章は何とかならないものかねえ。ちょっと辟易しないでもない。■バッハ:パルティータ第一番BWV825(ワイセンベルク、参照)。ピアノの音色は美しいが、バッハとしてはどうなのか。ちょっとロマンティックでもあり、どういう楽譜を使っているのか、一部で半音ちがっていたりする(たぶん、ワイセンベルクが勝手に改変しているのだと思う)。どうもピンとこない。おもしろくないことはないが。
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昼から、稲沢市荻須記念美術館へ「小磯良平展」を見に行く。荻須高徳と小磯良平は、共にパリで絵を勉強した仲間であり、それが縁でこの展覧会が開かれたらしい。小磯の絵は基本的にわかりやすいもので、人気があるのも宜なるかなと思った(そのせいか、駐車場がほとんど埋まっていたのには驚かされた)。まずすぐに感じたのは、小磯はタッチが一定しない画風(?)だということだ。時には印象派風、時にはフォーブ風と、統一されたタッチがなく、様々なタッチを巧みに使っており、器用な印象を受ける。それだけタッチを探求したということだろうか。小磯は長生きして、画歴も長いが、どちらかと言うと若い頃の絵の方が自分は気に入った。今回の出品では、「裁縫女」というのが一等いいと思った。暗い感じの画面だが、その中で薄いブルーの着衣がくっきりと目立つ。その他には、ピカソの真似などもあって、色々と試してみたこともわかる。
常設の荻須高徳も見てみたが、正直言って小磯良平より荻須の方が画家としては上ではないかと思った。まあ、優劣などをつけても仕方ないが、それだけ荻須が気に入ったということである。なに色を使っても、荻須には根本的な明るさがあるように感じられる。また、一貫した個性が認められる。比べると、小磯には「これが小磯風」というようなものがない。小磯は、芸術家としては破滅型というよりは、幸福な人生を送ったようだが、それが必ずしも芸術家としてよかったのかどうかは、むずかしいところなのではないか。しかしまあ、絵を見るというのは常に楽しいことで、今回も満足できたと思う。
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ロレンツォ・ヴァッラ『快楽について』読了。近藤恒一訳。立派な訳業だ。ヴァッラは十五世紀イタリアのユマニスト。じつは、本書のことは出版されてみて初めて知ったのだが、中身は相当に興味深いものだった。本書では、快楽を徹底的に善と捉えている。その意味で、ルネサンス的だとも云えよう。最後にはキリスト教的な快楽の肯定ということになるのだが、そこはどうも取ってつけたような感じもする。ストア派批判、異教的な快楽の肯定、すなわちエピクロス主義の肯定こそ、本書が時代に衝撃を与えたところなのではないか。現代でも、なかなかここまでは言い切れないような気がする。なお、本書は大部なもので、相当に読み応えがあった。目のつけどころとして、岩波文庫らしい本だと云えるだろう。よくぞ出してくれました。
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