曇。
プール。
志賀浩二『ルベーグ積分30講』を引き続き読む。ルベーグ積分を形式的に構成するだけなら、本書第十一章以降だけ読めばいいということになろう。しかし、それだけではおそらく何もわからないのであって、それ以前の「測度論」にかなり深入りしているところがとても面白い。同じ入門書としては、例えば岩波全書の溝畑茂『ルベーグ積分』があるが、これは測度論をほとんど無視した方法で、ルベーグ積分を取り敢えず使えるようにするためにはいいが、ルベーグ積分のそれらしい部分は闇の中である。『30講』での「カラテオドリの発想」が、まったく考慮に入れられていない。『30講』では、ルベーグの意味の「可測」とカラテオドリの意味のそれとが一致するところが、感動的なわけだ。なお、吉田洋一の『ルベグ積分入門』は、『30講』の考え方と同じような発想で書かれていて、また数学書としてはよりオーソドックスな書き方になっている。だから、『30講』の方が基礎は掘り下げられ、徹底しているが、吉田本の方が全体的に詳しい。なお、吉田洋一の本は、まだ拾い読みしただけだが、これはとてもいい本なのではあるまいか。絶版になっているのはもったいない。
『30講』の特徴は、「完全加法性」を強調している点である。そして、ボレル集合族(本書ではボレル集合体)と測度によって、「測度空間」が与えられてしまえば、あとは数学的な流れによってすらすら話が進んでゆく。ここに測度論の肝がある。そこに至るまでに、歴史的には、何度も抽象化への飛躍があったことが、よくわかるのである。
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