岡本隆司『近代中国史』

晴。
このところ朝が早いので眠い。

岡本隆司『近代中国史』読了。経済史の知見を基にした、近代中国史である。先駆的な業績として、宮崎市定の著作は素人も目を通していたが、それとは比較にならないほど、記述のピントがシャープになっている。実際自分には、本書の内容の殆どが未知であった。中国人の「アナーキスト」ぶり、つまり国家というものに頼らぬ姿勢は知られているが、それは中国の歴代王朝の経済的統治の仕方に原因があるという。すなわち、中国における国家とは、税の取り立てがあっても、それがまったく再分配されないようになっていた。つまり、財政は基本的に、軍事力と官僚制度を維持するためだけに存在したのである。また、徴税先は地主と大商人が多く、民衆レヴェルではなかった。そのことから、いきおい中央政府と一般人の間の隔たりが大きくなるのは当然である。むろん、それでは国がバラバラになってしまうので、両者を繋ぐ「中間団体」の存在が、伝統的に大きくなっていた。例えば、清朝末期の民衆反乱などは、この中間団体を考えねば理解できないし、現代でも中央と地方の対立の遠因となっているだろう。本書の特徴だと自分に思えたのは、じつにこの「中間団体」という存在をクローズアップしたところにあった。
 本書の記述は、学問的に広大かつ手堅いもので、安易なところはまったくないが、読んでいて素人にも刺激的なことは力説しておこう。記述は日清戦争あたりまでであるが、現代中国を考えるためにも役立つと思う。

近代中国史 (ちくま新書)

近代中国史 (ちくま新書)


音楽を聴く。■バッハ:ブランデンブルク協奏曲第五番BWV1050(ピノック)。この曲は、第一楽章の長大なチェンバロのソロが聴きどころだが、終楽章なんかもいいね。中庸を得たピノックの指揮は、安心して聴ける。■シューベルト:ピアノ・ソナタ第十九番D958(ペライア)。個人的に、シューベルトのピアノ・ソナタの中では一番好きな曲かも知れない。ペライアの演奏は洵にレヴェルの高いものだ。他の演奏と比べてみればわかる。ポリーニの名盤に匹敵し、ポリーニの構築的でスタイリッシュな演奏に比べ、ペライアのは、ごつごつしたシューベルトらしさを強調したものになっている。特に終楽章のリズムよい、跳ねるような弾き方が聴かせる。しかし、ペライアはどれもいいね。何を聴いても水準が高いよ。
AM1:28だ。明日も早いから、いい加減にして寝なくては。