東浩紀編『ゲンロン 4』

晴。
やたら早起き。
音楽を聴く。■バッハ:フランス組曲第五番 BWV816(マレイ・ペライア参照)。ジーグが前半繰り返し省略、後半繰り返しになっている。グールドのように、前半繰り返し、後半繰り返し省略であるのがふつうだろう。僕としてはいずれも省略して欲しくないのだが。残念だな。■シューベルト:ピアノ・ソナタ イ長調 D959 (ルドルフ・ゼルキン)。終楽章は矛盾の塊だ。何とも愛らしい、イノセントなメロディが主題なのに、殆ど空疎ともいうべき展開になっている。このあたりがシューベルトのむずかしいとことだろう。どんなに頑張っても、尊敬するベートーヴェンのようにはなれなかった。ゼルキンのピアノはさすがに深みのある、見事な出来だ。

Piano Sonata in a Major/Four Impromptus

Piano Sonata in a Major/Four Impromptus

You Tubeバレンボイムのピアノ、チェリビダッケ指揮のブラームス、ピアノ協奏曲第一番(参照)を聴き始めたのだが、途中で聴くのを止める。バレンボイムは指揮を始めてから時間が取れなくなったらしく、あんまり練習していないそうだ。そのせいなのか、切れ味の悪い、力の弱いピアノになってしまっている。チェリビダッケの音楽作りは相変わらず音楽のカドを丸く矯めてしまうもので、ふにゃふにゃの音だ。それに、ブラームスは本来もっとスケールの大きい作曲家で、こんな弱々しい音楽ではない。

ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調で、ピアノはアルゲリッチ。僕は髪が白くなってからのアルゲリッチの方が凄いと思っている。現役最高のピアニストだろう。音楽の根源に触れているような感じを覚えないではいられない。この曲はアルゲリッチにぴったり。どの楽章もすばらしいが、才気にあふれた両端楽章に挟まれた、何とも感傷的な緩徐楽章が好きだ。ホント、こんなセンチメンタルな曲が好きなのは恥ずかしいが、仕方がない。他にラヴェルはこんな音楽を書いていないと思う。長いピアノのソロ。

モーツァルトのピアノ協奏曲第二十番 K.466 で、ポリーニの弾き振り。1981/11/15 Live. 聴き始めてすぐに「ポリーニにしては甘やかな音のピアノだな」と感じた。一時期ポリーニはやわからい音のスタインウェイを使っていたので、その時期のものだろう(録音だとシューマンの交響的練習曲のそれなど)。久しぶりにポリーニを聴いたが、完璧すぎて退屈ともいえる。自分はポリーニとグールドをデフォルトにして音楽を聴いてきたが、いま思うと飛んでもないですね。自分にポピュラリティがないのは当り前だと思う。しかし八〇年代というのは不思議な時代だったな。一種の極限状態だったと思う。いまはあれが一気に崩壊したあとだ。

普段はまったく見ない Yahoo!ニュースをたまたまちょっと見てみたのだが、何という下らなさ。皆んなこんなのを見て「ニュースを見た」とか言うの? はっきり言って見ない方がマシ。「専門家」とやらが本当にひどい。日本が没落するわけだ。ってお前に言われたくないって? 御尤も。

東浩紀編『ゲンロン 4』を読む。長大な浅田彰インタヴューが目当てで買った。ほぼ期待どおりのおもしろさ。いまは若い人たち浅田彰って知らないだろうな。まあおっさんの自己満足で読んだだけだが、自分には強いインパクトがあった。浅田さんが己のことを「才能がない」っていうからには、本当に自分などは誰も読まないブログを書くくらいで結構だと納得する。本書は特集が「現代日本の批評 III」ということで、特集部分はだいたい読んだが、自分ごときがいうのも何だけれど、レヴェルがあまり高くない。さらに浅田さんともろに比較することになるので、「ゲンロン」のどうしようもない貧しさと頭の悪さが浮き彫りになってしまった。まあ、そういう時代だから仕方がないですけれどね。いちばんダメだと思ったのは、座談会(共同討議っていうのかな)の顔写真がどれもこれもひどいこと。知的な顔をしている人間がひとりもいない。浅田さんの顔と比べてみるとよろしいかと思う。しかし、これを日本の知性の代表と見做す向きもあるのだから、日本壊滅も仕方ないと思う。まあどうでもいいといえばそうなのですが。おっさんのひとりごとです。何だかわからないけれどご免なさいとあやまっておこう。
ゲンロン4 現代日本の批評III

ゲンロン4 現代日本の批評III

でもまあ他人のことはいいので、自分の貧しさを何とかしないといけないと痛感するのは毎度のことだが。
なお、この浅田彰インタヴューを懐古趣味と捉えるのはバカです。(反語的ではあるが)ポジティヴな、ドスの利いた言説がいっぱいに詰め込まれているので、感性のある人にはわかると思う。いまの人たちを見て、知識人ってバカのことだと思っている人には新鮮な驚きなのではないか。秀才っていうならこれくらいでないとね。なお、いまの秀才っぽい人で『構造と力』はわかりやすいとハッタリをかます人がいますが、そういう人もバカなので無視して構いません。この本がどれほど圧縮化されているかわかるのが知性ってものです。それに、いまは『構造と力』の同時代ではないので、ベースの知識がちがうから、僕が読むより若い人たちが読む方が大変なのは当り前です。もちろんいまでも読む価値はありますよ。
とこうで「ゲンロン」読了。読んでよかったと思う。黒瀬陽平なんかはなかなかおもしろかったので、著書があれば読んでみたくなった。総体的に、同時代ってのはいいものだなと思った。ほぼ引きこもりの田舎者のおっさんとしては、同時代というだけでスリリングなところがある。このボリュームをほぼ読み切ったのだから、僕もえらいでしょ。皆さんにお勧めしたい。

mathnb さんの問題だが、y = x / (x + 5) の双対曲線は
  
で合っているということですかね。で、さらにその双対曲線を出せと。まあこれ、元の y = x / (x + 5) になることはわかっているのですよね。双対曲線の双対曲線は元に戻るので(「郵便配達は二度ベルを鳴らす」つーのはそういうことですな)。実際にそうなるか確かめよということで、ちょっといま時間がないのでそのうちやってみましょう。そうなれば、双対曲線の検算にもなるしな。