柴田南雄『音楽史と音楽論』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト交響曲第三十八番K.504(ベーム参照)。何だかえらく演奏時間が短いな。■シューマン:ピアノ協奏曲op.54(ポリーニカラヤン1974Live)。ポリーニカラヤンのめずらしい共演で、「ポリーニ・エディション」のボーナスCDに収録されている(第一楽章はYou Tubeで聴ける)。第一楽章は肩すかし。ポリーニカラヤンに遠慮しているような感じで、全然曲に入ってきていない。カラヤンの音楽性ばかりが目立ち、これはダメかなと思っていたら、カデンツァになって突然入魂。思わず惹き込まれるようなデモーニッシュな弾きっぷりで、ここから変わってくる。第二楽章でこれはいいぞと期待した終楽章は、ポリーニが彼らしい演奏に終始する。今度はカラヤンの方がポリーニに合わせている感じだが、段々白熱してきて、両者鳥肌の立つような演奏だ。この曲のベストとは云えないかも知れないが、それでもこれほどカッコいい演奏は聴いたことがない。よかったです。なお、音質はあまりよくなく、また、終楽章にポリーニとしては意外なほどミスタッチがある。確かに通常盤で出せる録音ではないが、ポリーニかこの曲に関心がある人は、聴いて損はない演奏でしょう。

柴田南雄音楽史と音楽論』読了。著者は日本のクラシック音楽の作曲家として、代表的な存在の一人であり、特に西洋音楽について精緻で該博な知識を持った、分析的理論派とも云える作曲家だった。音楽史についても造詣が深く、本書は放送大学のテキストとして、著者が纏めたものである。構成としては、時代は新石器時代から始まり、日本と西洋の音楽を対比しながら記述したものだと云えようか。著者らしく、スケールが大きくて、縄文時代の音楽から記述を始めている音楽史の本は、画期的だったのではないか。日本の音楽では、戦国時代のキリスト教宣教師の持ち込んだ西洋音楽についての記述が、特に面白かった。それ以外でも、日本のことなのに自分はよく知らないことを、痛感させられた。なお、西洋のいわゆる古典派、ロマン派の音楽は、日本でもよく知られているということで、省略しているので、そこいらは注意が必要である。本書は音楽史に関する日本語での基本文献として、読む価値があると思う。
 個人的なことだが、自分が高校生のとき、たぶん著者が初期に作曲したと思われる、シンプルで美しい合唱曲を、高校生たちが歌ったものを聴いたことがある。それを覚えていて、そのメロディの断片を、今でも時折思い出す。あれからどこでも聴いたことがなくて、幻のような気がするくらいなのだが、さて、あれはどういう曲だったのか。CDにでもなっているのだろうか。