規制緩和について

上の本(『(株)貧困大国アメリカ』)を読んで一つ課題ができた。規制緩和についてである。規制緩和はマーケットに競争をもたらし、物の価格を下げて消費者の得になる、という議論がある。自分はそれは正しいと思っていたし、それ自体では今でもそう思っている。しかし、規制緩和は大手資本の参入を促し、マーケットがそれの寡占乃至独占状態になれば、あとはやりたい放題である。実際、価格を下げるために、必然的に生産者を搾取することになり、生産者はそれに逆らうことはできない、という構図ができあがる。(まさしくTPPは、それをやるのではないか。)こうしたことに関する、きちんとした研究が知りたい。誰かやっているだろう。
 取り敢えず、田中秀臣先生のブログを「規制緩和」で検索して読んでいる。勉強になる。早速見つけた議論に、田中先生の意見ではないのだが、飯田泰之先生の意見として、派遣労働の規制緩和小泉政権が元凶ではないというのがあるそうだ(参照)。小泉政権規制緩和をしなかったら、企業は外国へ逃げていってしまっただろう、というものである。企業が外国へ逃げるよりは、派遣労働でも何でも、日本人に働かせた方がいいだろうという理屈だろうか。ただこれは、企業が本当に外国へ逃げるのか、その可能性をどう見積もるか(憶測ではないのか)を考えないと、屁理屈になるだろうな。まあ、引用でないだけで、もとの飯田先生の議論にはあったのかも知れない。
 田中先生の意見で、日本の農業は過剰に保護されているので、貿易自由化や規制緩和で、それを何とかしないといけない、と(参照)。
 こういう話も。「ちなみに日本ではなぜか誤解されてるけれども、小さい政府=規制緩和というのは間違った認識で、労働者や社会的弱者を厚く保護する=大きい政府と積極的な規制緩和は矛盾しないんですよね」(参照)。規制緩和と云っても色々あるわけだ。取り敢えず、駒村康平氏の『大貧困社会』は1-click注文。
 二〇〇九年までの分を読んで、疲れたのでここまで。また続きを読むかも知れない。しかし、規制緩和とマーケットの寡占・独占、大資本(グローバル企業も含む)の参入と小規模業者の衰退という問題の立て方は、あからさまにはないように見えた。これは素人くさい、間違った問題の立て方なのか知らん。今ひとつわからんのう。
 そういえば、先に「規制緩和」でググってみるべきだったか。やってみると、まず Wikipedia は参考にならぬ。経済産業省のHP(参照)も、御座なりすぎる。大塚将司とかいう人の記事(参照)はわかりやすいし、つい納得しそうだが、実証データはあるのだろうか。
 タクシー業界の悲鳴(参照)は、これはよく聞く話である。
 国民生活審議会の報告書は、これはよくわかる。消費者庁のHP(参照)。
 シノドスに原田泰先生が書いているのを見つける(参照)。「成長戦略は規制緩和を中心にすべきだ」という題からわかるように、規制緩和賛成論。「緩和に反対する人々も無限にいる」という論調からもわかる。このエントリーからだけでは、規制緩和がどうよくて、緩和反対はどこが悪いのか、わかりにくいのは確か。しかし、保育所に関し「現在のままの制度で保育所の定員を増やすには巨額の補助金が必要になる。規制緩和保育所のコストを下げるとともに、保育所の料金を上げて需要を減らすべきである」というのは、経済学的には正しいのだろうが、料金を上げた結果、保育所の料金が払えなくなって、働けなくなる母親が出るのは構わないのだろうか。こちらが何か誤解してますか?
 「晴耕雨読」というブログの記事(参照)。素人議論の典型だろう。自分もド素人なので、よくわかる議論だ。上の堤未果の本の内容に、見事に合致している。こういうものを、経済の専門家はどう読むのだろう。まあ、普通の専門家はこういうの、読まないわな。