晴。
古田亮『高橋由一』読了。日本最初の洋画家といわれる*1、高橋由一の評伝である。由一が生まれたのは江戸時代、一九二八年で、武士の家に生まれ育った。武道で身を立てる筈だったが、体質的に合わず、子供の頃から得意だった画業を学ぶことを許されたという。もちろん洋画などない時代であり、絵(日本画)を学ぶこと自体、遅かった。本格的に洋画を学ぶのは四十歳近くになってからというのは、驚かされる。画風を確立してからも、フェノロサや岡倉天心が日本画を称揚したため、ある程度著名ではあったが経済的にも困窮し、洋画を発展させようという試みも、打ち砕かれたのだった。歴史的にいうと、日本での洋画の確立は黒田清輝によるものとされ、由一のことは長らく忘れられていたらしい。
これらのことは、写実ではあるが、それに留まらない由一の絵の魅力からすると、意外なことである。もっとも由一自身は、洋画の記録媒体としての写実性を利点としたものであり、そこを強調したので、彼は「絵の魅力」というものを、いったいどう考えていたのであろうか。なお、由一の再評価は、土方定一の企画した昭和四十六年の回顧展によるものだという。
- 作者: 古田亮
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/04/24
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敢て云う。若い奴らに媚びるな。許すな。期待するな。彼ら彼女らには、それだけの価値はない。そして、己の畑を耕せ。自らの貧しさに徹底的に向き合え。後の世代が汲むところがあるとすれば、我々のその廃墟からしかない。