宮本常一『生きていく民俗 生業の推移』/L‐F・セリーヌ『なしくずしの死(上)』

晴。
プール。アピタとその本屋。
宮本常一『生きていく民俗 生業の推移』読了。日本で「職業」というものが如何に生じてきたか。古代から考察している。本書をまとめるに当っては、戦後の職業観の変化が、著者に与えた影響を見逃すことはできまい。はっきりいえば、本書冒頭にあるが、農家に嫁の来てがなくなったということである。これは日本の職業観の変化のうちでも、とても大きな出来事だった。農家の嫁が、自分の娘は農家に嫁いでほしくなくなった、それは農家の嫁の人生というものが、あまりにきつい、理不尽なものであったということに、彼女たちが気づいたということであった。

生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)

生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)

ルイ‐フェルディナン・セリーヌ『なしくずしの死(上)』読了。十年間積読にしてあった本。惨めな少年時代を描いた自伝的作品らしく、全篇これ呪詛であり、罵倒である。が、正直言って、(少なくともここまでは)衝撃というほどでもない。翻訳というせいもあるだろうし、悪意だけなら、2ちゃんねるツイッター、アマゾンのレビューも知っているしね。日本の悪意は、呪詛罵倒があまりなくて、自意識過剰で(反対意見を出されると、自分の全人格が否定されたかのような反応をする)、じめじめして脳みそ空っぽという感じ。
なしくずしの死〈上〉 (河出文庫)

なしくずしの死〈上〉 (河出文庫)


それにしても、どんな本であろうが、アマゾンのレビューで低い評価をつけている奴の九割は、単にリテラシーがないだけだな。作者が馬鹿なんじゃなくて、読めていない自分が馬鹿なのだと思いもしていない。見なきゃいいのだということはわかっているのだが、つい見てしまって目の穢れる自分が情けない。