島尾敏雄『夢の中での日常』/エルヴェ・ギベール『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』/ルトスワフスキを聴く

雨。
41J5Z2ON4oL._SL500_AA300_昨晩深夜、グールドやポリーニを聴いていたら、たまらなく音楽が聴きたくなってきた。これまで何度も何度も聴いてきた演奏だが、ポリーニストラヴィンスキーペトルーシュカからの三楽章」、プロコフィエフの第七ソナタなど、野蛮できわめて美しい演奏。これって完璧というのだろうか。(プロコフィエフだが、曲を十全に弾き切ったというのなら、リヒテルの演奏に敵うものはないだろう。)モダニズムの極致だと云うべきだ。そして、ポエジーがあることは是非指摘しておきたい。朝起きて、ジュリアードSQのハイドン・セットの続きを聴く。テンポはやや速めで、キビキビしている。これもモダン。あまりにも容易に弾いていて、余裕たっぷりなのが頼もしい。何の不満もなく、音楽に浸れる。
 ちなみに、グールドの演奏というのは、聴きすぎると飽きるようなものだ。聴くたびに新しい、という演奏家ではないのではないか。実際、ルーチンでやっている録音もあると思う。でも、それで必ずしもつまらないわけではないから、グールドなのだが。
 松岡正剛の千夜千冊、最新の1465夜で、池澤夏樹の『春を恨んだりはしない』を取り上げているが、これが素晴らしい。引用されているいろいろな人の俳句や短歌は、自分などには知らないものばかりだが、これがいいのだ。池澤夏樹って微温的な感じなのだが、松岡正剛は意外にも好きなのかな。僕もけっこう好きだ。

島尾敏雄『夢の中での日常』読了。短篇集。どれも、夢の中を思わせる、非現実的で透明な描写で書かれている。話者は何をどういう風にしたいのかわからず動いている感じで、焦ったり開き直ったりしている。そして、具体的な描写はほとんどないが、エロティックな感覚を刺激するようなところがないだろうか。
 なお、自分が読んだのは1973年の角川文庫版だが、アマゾンに登録されていないようだ。仮に別の版を挙げておく。

エルヴェ・ギベール『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』読了。エイズになっての顛末。こういうのはあまり好みでないな。かかるものをおもしろく読んでもらうというのが、著者の望みだったのか、どうか。読者にショックを与えてやろうというのかな。実際に日本でもベストセラーになったそうだが。
ぼくの命を救ってくれなかった友へ (集英社文庫)

ぼくの命を救ってくれなかった友へ (集英社文庫)

マンキューのミクロを読む。わかりやすいのはいいが、人の命の値段とか、経済学ってここまで価値を数値化するのかと知ると、多少引かないでもない。そりゃ合理的は合理的でしょうけれど。腎臓の一方を売るのは公平で合理的、という議論もあるな。

ナクソス・レーベルの、ルトスワフスキ管弦楽集第八集を聴く。収録曲は、クラリネット管弦楽のためのダンス・プレリュード。オーボエ、ハープと室内管弦楽のための二重協奏曲。グラーヴェ。チェイン1。8つの子供の歌。二重協奏曲が一番ラディカルで、もっとも美しい。どこか武満徹を連想したが、正しい連想かどうか。ルトスワフスキは、ナクソス・レーベルにたくさん入っている(参照)。
ルトスワフスキ:管弦楽曲集 - 8 二重協奏曲/ダンス・プレリュード/チェイン1/他

ルトスワフスキ:管弦楽曲集 - 8 二重協奏曲/ダンス・プレリュード/チェイン1/他