土屋恵一郎『世阿弥の言葉』

晴。
土屋恵一郎『世阿弥の言葉』読了。世阿弥の言葉を現代人へのアドバイスとする、一種のビジネス本である。これは皮肉ではなくて、著者自身がそう云っているのだ。著者の専攻は法哲学で、ベンサムについての一著はじつにユニークなものだった。能にもとても詳しいということで、世阿弥を読み解いている。自分には残念なことに、本書は才能のある人向けの本で、才能もなく、さらに能について何も知らない自分のような者には、何とも途方に暮れるしかないようなものだった。あんまり才能がないなどと連呼するのも嫌味だが、本当のことでどうしようもないし、それだからこそ、才能というものにも考えが及ぶのだ。当り前のことだが、才能というのは頭の良し悪しとはあまり関係がない。簡単にコントロールできるようなものでもなく、才能があって苦しいということも普通にあるだろう。だから、本書のような本が書かれねばならないのかも知れない。

世阿弥の言葉――心の糧、創造の糧 (岩波現代文庫)

世阿弥の言葉――心の糧、創造の糧 (岩波現代文庫)


音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第五番K.175(ペライア)。時々この曲が聴きたくなる。■シューマン:ピアノ・ソナタ第一番op.11(ポリーニ)。最近ポリーニを聴いていなかったのだが、やはり自分の出発点はここにあると再確認する。今まで追求してきたことと、これが一体化しないかと、強烈に思う。つまり、この非対称的な精神と、対称的精神の統合。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第二十一番K.467(ポリーニ)。ポリーニが間違いなく、自分の中に帰ってきた! 何を聴いても面白い感じだ。嬉しい。■バッハ:ピアノ協奏曲第一番(グールド、バーンスタイン)。一時期聴きまくっていた演奏だが、ここ暫く遠ざかっていた。この演奏もまた面白く聴けるのだ。■バッハ:ピアノ協奏曲第三番(グールド、ゴルシュマン)。いい曲だなあ。(AM3:13)