ハラルト・シュテュンプケ『鼻行類』/穂村弘『本当はちがうんだ日記』

日曜日。晴時々曇。
大震災からちょうど一年。
カルコス。今月のちくま学芸文庫の新刊は好みすぎて、全部買うしかなかった。
ハラルト・シュテュンプケ鼻行類』読了。本書のことは学生のとき、荒俣宏の本で知り、訳者の日高敏隆ではないが「今ごろになって、哺乳類の新しい目(もく)が発見されるとは!」と驚嘆したのであるが、農学部の友人に話したら笑われた。そりゃ鼻で歩く動物がいるわけないよな。いやはや、荒俣に一杯くわされたわけであるが、それからしていまようやく読んでみたことになる。じつになんとも面白かった。博物学の体裁を取った図版だけでも見ていて飽きない。訳者も「理論動物学として抜群」の本と評するとおりである。まったく手の込んだ遊びだ。

鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 (Documenta Historiae Naturalium)

鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 (Documenta Historiae Naturalium)

穂村弘『本当はちがうんだ日記』読了。いつもどおりげらげら笑いながら読んでいた天才・ほむらさんのエッセイ集であるが、読んでいる内に何だかもの悲しいような気分になってきた。やがてかなしき鵜船かななのである。この冗談のようなエッセイたち、裏返せば深刻な批評にもなっているのだ。「がんばってネ」というメールの末尾のせいだけで、二十歳年上の恋人との恋が醒めてしまった若い女性。買った家の所在地を聞かれ、板橋区というや、「でも、あと二十メートルで豊島区なの」と早口で付け加えた著者の知人。これが批評でなくて何なのか。まあしかし、ほむらさんを読んで力みかえるのはいい加減にしておこう。読めばきっと笑えるはずです。
本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)

本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)