日高敏隆『チョウはなぜ飛ぶか』/志賀浩二『数学という学問2』

晴。
日高敏隆『チョウはなぜ飛ぶか』読了。日高先生がアゲハチョウの研究を、試行錯誤を交えながらやっていくところを書いた本だ。既に研究が済んでいるのではなく、まさしくその過程を楽しむ本になっている。そしてまた、研究の目的が、素朴な疑問の延長上にあるのがいい。アゲハチョウは飛ぶ道が決っていて、それを「チョウ道」というのだが、実際、これに関する疑問は、先生が子供の頃から抱いていたものなのだ。その他、アゲハチョウのオスは、メスのどこに惹きつけられて寄ってくるのかとか、アゲハチョウのメスは、どうして特定の種類の樹に卵を産み付けているのかとか、まことに楽しい。最後の研究など、実験結果の解釈に困ってしまって、研究はヤブの中に入ってしまうのだが(しかし、どうしてあんな不思議な結果になったのだろう)、研究とはそう上手くいくことばかりではないのだ。
 中学生でも読める先生のやわらかい文章には、どこかあはれを誘うところがある。先生も帰らぬ人になってしまったことを思うと、何だかさみしくなってくる。

チョウはなぜ飛ぶか (高校生に贈る生物学 (3))

チョウはなぜ飛ぶか (高校生に贈る生物学 (3))

志賀浩二『数学という学問2』読了。解析の概念の発展を主に記述する。ある程度、複素解析の予備知識がある方がよいだろう。一般向けにしては、かなり高度な内容も含まれている。すべてを理解するのは結構大変だと思うので、初学者はだいたいの流れがわかればよいのではないか。個人的には、リーマンについての話が興味深かった。コーシーの積分概念と、リーマンのそれとのほんの些細な違いが、じつは重要なのだとか。ジョルダン測度の話はあるが、ルベーグ積分はこの後の巻になるのかな。
 なお、志賀浩二先生の本はだいぶ読んでいるので、サイト内検索をかけたら結構出てくる筈。