フルトヴェングラー『音楽を語る』『音と言葉』

晴。
プール。イオン。

W・フルトヴェングラー『音楽を語る』読了。インタビュー六本と、「現代の音楽」と題する論考。フルトヴェングラーの録音は永遠に残るだろうが、昔と同じ聞き方がされるとは限らない。いまや、ベートーヴェンに全身全霊を打ち込むというような聞き方は稀だろう。そしてそれは、必ずしも悪いことではないと思う。今の時代の聞き方として、アクチュアルなものがそれはそれであるだろうから。そういう聞き方に堪えるのが、古典というものであろう。本書を読むと、素晴らしい音楽が、真摯だが古くさい理念に主導されていることもあるのだなと思う。もちろん、ハッとする言葉もたくさんある。ベートーヴェンワーグナーの音楽を語っているところなどは、今でも真実だろう。
 なお本書には、ワーグナードビュッシーはもちろんだし、ブルックナーシェーンベルクストラヴィンスキー、またレーガー、ヒンデミットまで出てくるのだが、マーラーのマの字も出てこない。これは不思議だ。己と同じ、作曲もする大指揮者ということで、同族嫌悪だろうか。まあ、マーラーは指揮者として以上に、作曲家としてあまりにも偉大であったが。

音楽を語る (河出文庫)

音楽を語る (河出文庫)

フルトヴェングラー『音と言葉』読了。うーん、上の本と比べると、本書は格段に素晴らしいではないか。翻訳も(多少問題があるのは明らかだが)、自分にはこちらの方が好みだ。どの論述もいいが、とりわけ、ニーチェワーグナーを絡めて論じた「ワグナーの場合」が面白かった。『悲劇の誕生』は、ワーグナー古代ギリシアに当て嵌めただけというのは、ニーチェ論としても興味深い。それくらいフルトヴェングラーは、ニーチェも読み込んでいる。また、ブルックナーヒンデミットも、聞いてみたりしたくなった。クラシック音楽が好きな人には、本書は必読書と云ってもよいだろう。
音と言葉 (新潮文庫)

音と言葉 (新潮文庫)