晴。
吉田秀和『フルトヴェングラー』読了。文庫オリジナル。吉田さんはフルトヴェングラーが大好きだったのだな。しかし本書を読んでいると、もちろんフルトヴェングラーは偉いのだが、とにかく吉田秀和の偉さをつくづく思わずにはいられなかった。己の感じたことを、あらゆる手段をつかって正確に語ろうとすること。知と情の絶妙なブレンド。省みるに、自分の聞き方は、情の方に偏っていることを痛感した。「知」が足りない。そして、日本の音楽評論も、結局同じで、知的に語れていないのである。それはまた、きちんと聞けていないことに等しい。
それに、文章の力。本書解説の片山杜秀氏の音楽評論は自分も大好きなのだが、こうやって(短文ながら)吉田さんの文章とならべてみると、残念ながら貧しくて索然とさせられる。
それから、ちょっと付け加えておくが、フルトヴェングラーとナチスの問題は厄介だな。これは敷衍すれば、芸術と政治の問題でもある。これは、個人的にあまり考えたことがなかったなと思った。
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