『この数学書がおもしろい』/莫言『赤い高粱』

日曜日。晴。
カルコスと図書館。

図書館から借りてきた、数学書房編集部編『この数学書がおもしろい 増補新版』にざっと目を通す。題名ではないが、本書自身もなかなか面白かった。ただ、初心者向けか専門家向けのいずれかという感じで、学生など、数学を学ぶ途中の人向きの本は、思い出話を除いては意外と少ない。まあ、そうした人はかっちりした教科書で学びなさい、ということだろうか。ネット上を彷徨っていた方が、参考になる本は見つけやすいかも知れない。
 印象に残ったのは、やはり高木貞治の本が多く挙げられていたこと。それから、山内・杉浦の『連続群論入門』とポントリャーギンの『連続群論』が多かったのは意外。両者とも一応持っているのだが、後者は面倒くさそうでまだ読んでいないのです。

この数学書がおもしろい 増補新版

この数学書がおもしろい 増補新版

図書館から借りてきた、莫言『赤い高粱』読了。第一章は日中戦争時の抗日パルチザンが背景にある。今でもよく使われる、「日本鬼子」等の日本人蔑称が頻出し、日本人としてはなかなか素直に小説を楽しむ訳にはいかない。だから、正確な評価はできないかも知れないが、自分の感じとしては、第一章はそれほど高い文学的価値があるとは思えなかった。描写は過度に強烈だが、人物が今ひとつ生き生きと動いていないようにも感じる。中国人の作品としては、イデオロギー的には正しいのだろう。(もっとも、それが目的で書いたわけではないだろうけれど。)
 しかし、面白いのは第二章だ。第一章に出てきた、語り手の祖母と祖父の若い頃の話で、特に祖母のキャラクターが強烈であり、息もつかせずに読まされてしまう。単にリアリズムというよりは、いわゆる「マジック・リアリズム」の作品と云ってもよく、人物たちの「野蛮さ」のエネルギーが奔逸している。本書は映画化されて有名になったが、この部分は小説として、それだけで独立した価値を有すると思う。
赤い高粱 (岩波現代文庫)

赤い高粱 (岩波現代文庫)


音楽を聴く。■ベートーヴェン交響曲第九番フルトヴェングラー1951)。本当に久しぶりに「第九」を聴いた。終楽章も、素直に感動しました。祝祭的音楽。最後はやり過ぎかも知れないが、フルトヴェングラーの指揮は凄まじい。■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第三十一番(バックハウス)。