福田和也『昭和天皇 第二部』/中井久夫『「つながり」の精神病理』

雨。
福田和也昭和天皇 第二部』読了。副題「英国王室と関東大震災」。政治から文明論、人物評まで、目配りの広い本で、おもしろいし、とても勉強になる。政治的には右寄りと思われる著者だが、イデオロギーに振り回されるようなことはなく、左翼思想の持ち主も公平に描かれているように思われる。

中井久夫『「つながり」の精神病理』読了。著者の文章はかなり読んできたつもりだったが、八十年代中頃に、日本社会の根底的な激変を語った文章が多く書かれているのには、今回初めて気がついた。それも、明らかによくない方への変化が、含意されている。著者は社会無意識的な徴候に敏感な人であり、この判断は「やはり」と思わせることである。この変化は、もしかすると室町時代以来のものであるかも知れないのだ。「多くの人は気がついていないかもしれない。気がついてもどうしようもないのかもしれない。それは一言にして言えば、現代日本の社会は、普通の人が生きにくい社会になったということである。」(p.164)まさしく。今の若い人たちには、その感覚が当り前すぎて、却って気づかないくらいではあるまいか。