中井久夫『分裂病と人類』/吉本ばなな『N・P』

日曜日。晴。
カルコス。「レコード芸術」誌を立ち読みする。ああ、まだ吉田秀和さんの連載が掲載されている。シャイーとティーレマンか。これは聴いてみたいなあ、などと思うことももうないのだ。
モーツァルトの弦楽五重奏曲第一番を聴く(ジュリアードSQ+グラハム)。クリフォード・カーゾンのピアノで、フランクの交響的変奏曲その他を聴く。硬質な音、端正な演奏で、テクニックも抜群だ。七月の終わりに、カーゾンのデッカ・レコーディング全集が出るらしい。最近、彼のピアノのよさに目覚めたところなので、これは買わねば。
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中井久夫分裂病と人類』読了。第一章が有名な論文。第二章「執着気質の歴史的背景」は、個人的に教えられるところが多かった。自分は本書第一章にいう「分裂病親和者S親和者)」なので、こちらはよく知っているのだが、執着気質というのは感覚的にわかりにくいのだ。第三章「西欧精神医学背景史」は、みすず書房の同名本と同じなのかなと思ったが、一読した後参照してみると、みすず本の方はこれに相当の加筆がなされているようである。いずれにせよ、この章の博覧強記ぶりと構造のあざやかさは、尋常のことではない。

分裂病と人類 (UP選書 221)

分裂病と人類 (UP選書 221)

西欧精神医学背景史 (みすずライブラリー)

西欧精神医学背景史 (みすずライブラリー)

吉本ばなな『N・P』読了。何とも繊細な感覚。過ぎ去ろうとする夏の日へのノスタルジーと、ちょっとのことで崩壊してしまいそうな世界。通俗的だなどと云うなかれ。著者はそんなことは思ってもみないだろう。ここにはじつは、通俗的な「妄想」などないのだ。リアルこそがある。
N・P (角川文庫)

N・P (角川文庫)