伊藤正敏『無縁所の中世』

晴。
カルコス。BOOK OFF。
伊藤正敏『無縁所の中世』読了。当るを幸い切りまくっている、威勢のよい歴史書だ。網野善彦も、マルクス主義民俗学の奇妙な混淆だとして、実証的でないと切り捨てられている。著者の言うには、中世の社会を研究するのには、寺社の資料を用いることは必須で、都市と見做せるほど力を持つ寺社の存在を、もっとクローズ・アップすべきなのである。そのような存在こそ「無縁」なのであり、網野のいうような、ちまちました「アジール」など(理論的に言っても)何ほどでもない、ということらしい。また、著者の中世観として、暴力としての「実力」が支配するという感じで、これもまた、一時期はやった「明るい中世」に対する反動となっている。とにかく著者は、実証を連呼する。それは学問として、当然の態度であろう。
 しかし、網野が亡くなったあと、堰を切ったように contra Amino ばかりだな。

無縁所の中世 (ちくま新書)

無縁所の中世 (ちくま新書)