李琴峰『星月夜』 / 「スキップとローファー」(2023)を観る

晴。
 
昨日 YouTube で聴いていた細野さんと中沢さんのラジオ、一晩経っても「善良さ」という言葉が頭に残っている。どんなに頭がよくても、どんなに才能があっても、善良さがないということ。いや、そんな人たちだけでない、極ふつうの人に、素朴な善良さがない(自分を棚に上げているわけではない)、そういう時代だな。ネットはマウンティングばかりだが、じゃあリアル生活に、そうでない人がどこかに居るのか。どこにもいないじゃないか、知らんけどね。
 
「和魂洋才」という言葉があって、引き裂かれた日本人の心を表現していたけれど、いまは和魂洋才なんてことはなくなった。「洋才」を身につけ「和魂」を失い、それに代わるたましいを見つけられないでいる日本人。いくら「日本スゴイ」といったって、精々二、三百年程度の「伝統」に還ってみたって、ダメなものはダメなのである。
 
まあしかし、グチグチいってたって何にもならないよね。
 
寝ころがって部屋を暗くして、YouTube で青葉市子のカバー曲集を聴く。
Ichiko Aoba - covers (Bootleg, 2022) | YouTube
Ichiko Aoba - covers ii (Bootleg, 2022) | YouTube
細野さんや武満さんの曲もカバーしてるんだな。
 

 
昼。
日本のニュースはあまり見ないのだが(ヘッドラインだけで充分である)、たまに新聞やテレビで日本の政治のニュースを見ると、腹が立つよりはバカバカしくて呆れることが多い。いまの日本の政治家って、いったい何を考えているんだろうね。ほんと、まだ日本が平和なのだけが救いである。
 また、テレビのニュース自体がひどいというか、NHK の昼や夜七時のニュースをちらっと見かけると、キャスターが能面のような無表情で、あたりさわりのない原稿を棒読みしているだけ、こんなの何の意味があるのか、ジャーナリズムといえるのか。
 わたしは新聞は時々読む。クソ呼ばわりされる朝日新聞である。政治の一面記事はほとんどマジメに読まないが(読んだってムダである)、ここは大多数のネット民と見解がちがうところで、一日の新聞のどこかに、あまり目立たないところとかに、得るものがたいていひとつくらいはある。わたしは、ネット記事があれば新聞は要らないとは、ちょっと言い切れない。逆にいえば、ネット記事だってそれほどひどい。
 NHK にも、「キャッチ!世界のトップニュース」のように、目立たないところに宝石のような番組があったりする。NHK では、わたしはこれと、あといつまで続くかわからない「こころ旅」が好きだ。
 
Torū Takemitsu: Small Sky/小さな空 (for choir) - YouTube
 
 
珈琲工房ひぐち北一色店。
李琴峰(り・ことみ)さんの『星月夜』を読み始める。中篇小説、かな。この作品も、レズビアンという性的マイノリティの恋と、日本における台湾出身者や、(中国の)新疆ウイグル自治区出身者という政治的マイノリティの現実、その二重のマイノリティ性を正面から扱ってじつに読ませる。まだ半分くらいしか読んでいないし、わたしのような現実をよく知らない幼稚な人間にはちょっと手に余るので、詳述は避けるが、ここまで読んだだけでも、すばらしくおもしろい純文学だなあという感嘆を抑えることができない。また、掘削力のあるパワフルな日本語! いまの日本語の大部分がいかに閉ざされているか、よくわかる。(まあ、その現代日本の幼稚と閉塞を見事に小説にした、村上春樹のような大小説家も、日本に存在するわけだが。)残りを読むのが楽しみだ。
 
図書館から借りてきた、李琴峰『星月夜』(2020)読了。ほんとおもしろかった。性愛・政治小説に分類されるマイノリティ文学だけれど、あるいは哀切で大人っぽいラブストーリーだともいえる。こういう読み方を、著者はどう思うだろうか。もっと政治的に読むべきなのか。いずれにせよ、この優れたすてきにおもしろい小説が、たくさんの読者を持ちますように。

著者は、「主体」が確立しているという感じがするな。だから、大人っぽい。わたしも含め、日本人は自己がふわふわしていて、明確な中心が存在しない。(なので、キャラ立ちが重視される。キャラ立ちは相対的関係である。)そこも、随分と従来の日本の小説とちがう、という印象を受けるが、まあそれはちょっとわたしには主題が大きすぎるかな。
 
 
夜。
昨日から YouTube で視聴し始めた武満さんの追悼番組「武満 徹が残したものは」を視聴し終える。全部で二時間、しかし視聴してよかった。
 
『スキップとローファー』(2023)第12話(最終話)まで観る。へー、ラブコメほとんどなしか。後半は志摩君の多少ダークな話が中心だった。結局、女子四人の友情物語みたいなところがいちばん刺さったな。ふつうならきっと友達になれないような組み合わせで、皆んな「友達になれてほんとによかった」って密かに思っているのがよくわかって、フィクションなんだけど、何かうらやましいくらいだった。天然、美人、陰キャ、めんどくさい女、揃ってるよなーって。特に、努力家だけどちょっといじわるで、めんどくさく計算高いミカちゃん、彼女が受け入れられるとはねー、懐が深いよ。また、美人ゆえに同性とも異性とも自然につきあえなかった結月ちゃん、素の自分でつきあえる友達ができて、うれしさを噛み締めているのもいい感じだった。