『吉本隆明 没後10年、激動の時代に思考し続けるために』

晴。
 
大垣。
ミスタードーナツ大垣ショップ。ホット・スイーツパイ りんご+ブレンドコーヒー404円。『イリノイ遠景近景』の続き。軽くて明るいエッセイ集だと思っていたら、それだけではなかった、「ギヴ・ミー・シェルター」の章など。ナチス・ドイツ下で、ユダヤ人の子供としてと、ドイツ軍の少年兵、さらにはヒトラー・ユーゲントの一員としてとの二つの矛盾する生を送った、少年の話とか。彼は戦後、イスラエルに渡って生きるのだが、ヒトラー・ユーゲントとしてナチス・ドイツを愛した自分も、確実に存在すると、講演ではっきりと述べたそうだ。わたしには、そういうことを述べるのはひどく勇気が要るように思えるのだが、やはり、真実を伝えるべきという「静かな正義」の感覚が常識に近いのだろうか。わたしには、かかる「静かな正義」の感覚が日本人には乏しいように思える、よくはわからないが。日本人の「正義」は、あるとしても、なんかうるさい感じがする、これも、よくわからないが。わたしなんかには、正義の感覚は薄いのだろうと思うし、むしろ正義というものに警戒感すらあるわけで。

 
 
夜。
ブラタモリ」今日は「深海」がテーマで、何をやるのかと思っていたのだが、おもしろかった。原初の地球は表面がすべて海だったわけだが、そこに大陸というものができた最新理論つーのは知らなかったな。それから、JAMSTECのしんかい6500、僕も乗ってみたい笑。僕が科学少年だった頃は、まだしんかい2000だったと思う。日本の深海探査能力って、すごかったんだぜ。いまはどうなのかな。
 調べてみたら、しんかい2000って、「機械遺産」というのに認定されているんだってさ。いまは新江ノ島水族館で見られるのだそう。
 
 
河出書房新社の『吉本隆明 没後10年、激動の時代に思考し続けるために』をだいたい読んだ。いまの人では小田原のどかさん、あとは竹内好鮎川信夫鶴見俊輔あたりの吉本論がよかった。他はおおよそ、吉本隆明という人の「音色」を捉えていないように思われる。思想家・吉本隆明の文章は、へんなことをいうようだが、あまりに抽象的に読みすぎてはいけないのだ。吉本さんは、観念の空中楼閣を建設して喜んでいる「思想家」ではなかった。吉本さんの「観念」は、吉本さんの「庶民としての日常生活」と連続している。むずかしいのが好きな人は、その「庶民」とは何か、どう定義されるのか、とか例えばいいたくなるだろうが、よくも悪くも吉本さんはそういう人にあまり向いていないと思う。吉本さんの中では、すべてが、日常の一挙一投足と思想が、繋がっているのだ。いわばその「関係性の総体」において、吉本さんは読まれねばならない。ま、わたしにそれができているかというと、まだまだ全然なんだけどね。
 わたしは吉本さんの全集で、何ということもない、ささやかな短文をたくさん読んでみることをお勧めしたい。吉本さんにおいてはすべてが繋がっているのだから、比較的わかりやすい断片的文章から、むずかしい思想書へ辿っていく道もあるのだ。そこが、ふつうの思想家(?)とはちょっとちがうところである。 
 
NML で音楽を聴く。■ベートーヴェンピアノ三重奏曲第七番 op.97 で、ヴァイオリンはユーディ・メニューイン、チェロはモーリス・ジャンドロン、ピアノはヘプツィバ・メニューインNML)。すばらしい。特に全体をリードする、ヘプツィバ・メニューインのピアノが生き生きとしている。