井上智洋『人工知能と経済の未来』

晴。暑いくらい。
早起き。
音楽を聴く。■バッハ:ブランデンブルク協奏曲第三番 BWV1048(ブリテン参照)。■クヴァンツ:フルート協奏曲ト短調 QV5:196 (フランク・トゥンス、ル・ビュファルダン)。クヴァンツという作曲家は初めて聴くが、カッコいい曲ではないか。気に入った。フリードリヒ大王のフルート教師として有名な人らしく、時代は C.P.E.バッハと同じくらいか。曲の印象もまさしくそんな感じで、バロックなのだが古典派にちょっと入りかかっている感じもする。どちらかといえばバロック寄りで、ヴィヴァルディを思わせるところがある。C.P.E.バッハの方が新しく聴こえるだろう。ともかく、これは充分聴くに値する曲ですよ。

クヴァンツ: フルート協奏曲集 (J.J. Quantz : Flute Concertos / Frank Theuns, Les Buffardins) [輸入盤]

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ラフマニノフ前奏曲 op.23-1, op.32-9, op.32-10, op.32-12, op.23-8, op.32-1, op.32-2, op.32-6, 32-7, 23-2, 23-4, 23-5, 23-7、アンコール (スヴャトスラフ・リヒテル参照)。1960/10/28 Live. 後半ラフマニノフ前奏曲だけというリサイタルは、いまですら滅多にないだろう。言うまでもなくリヒテルは超人的。ラフマニノフっていうのはこんなに中身があるのだということがよくわかる。それにしても、ホロヴィッツリヒテルのお陰で、ラフマニノフの素晴らしさを教えられたようなものだ。ピアノ協奏曲第二番と第三番だけではないのである。なお、アンコールのドビュッシーは絶品。

久しぶりにカルコス。コンピュータ書のコーナーがだいぶ模様替えしていた。気づいたのは、機械学習の本がだいぶ並んでいること。最近ふつうのニュースでも人工知能(AI)の話題をよく目にするが、これは具体的には機械学習がベースになる。もちろん、グーグル社が自前の機械学習ライブラリである「テンサーフロー TensorFlow」(テンソルフローともいう。前者の呼び方の方が多いようだ)をオープンソース化したのが大きく、いまやちょっとしたブームになっている。そしてテンサーフローは Python 上で動くため、Python への注目度がさらに高くなっているのはまちがいない。カルコスでも Python に特化した書籍を何冊も目にしたくらいである。僕のような Ruby 好きにはちょっと残念な気もするが、こればかりは仕方がない(Ruby も頑張って欲しいものである)。自分はそれほど流行を追いたいわけではないし、そもそも低レヴェルプログラマであるが、そのうち Python 用の機械学習本を買うことにはなるだろう。
 それはそれとして、基本的な理論書が読みたいのだよね。自分はプログラミングは完全独学なので、大学や専門学校などで教わる理論面が弱いが、これが大切なことにいまさら気がついた。それに理論面は思ったよりずっとおもしろい。自分に合っていると思う。という感じです。
テンサーフローだが、何故か Python 2 らしいのだよね。どうして 3 ではないのだろう。もう 2 を使っている人はだいぶ少なくなったのではないかと思うが。

井上智洋『人工知能と経済の未来』読了。副題「2030年雇用大崩壊」。これはいい本だった。有用な新書本を久しぶりに読んだ。まず先に断っておくが、本書はトンデモ本ではない。著者は2030年頃までに人間のする仕事の多くを AI がやるようになると述べているが、これは局外者の放言ではなく、実際にコンピュータ・サイエンスに参画できる能力の持ち主による発言である。自分の如き初心者プログラマでも、著者がハッタリをかましているかどうかくらいはわかる。もちろん本業は経済学なのだが、またこれがきちんと経済学を勉強されている経済学者であることは明らかだ。というのも、経済学者を名乗った大学教授でもトンデモ経済学者は巷に溢れているから(テレビやネットでもよく見かけますね)。若い優秀な学者だな。
 著者はその「雇用大崩壊」に関して、BI(ベーシック・インカム)の導入を提言されているが、その部分は AI と切り離しても読めるだろう。本書では、ベーシック・インカムがいかに合理的で、敢ていえば(これは自分が勝手にいうのだが)「人間的な」政策であるかを明らかにしている。これはそれほどむずかしい理論ではないので、是非お読みいただきたい。BI はまだ歴史上導入例がないが、既に試験的な導入が始まろうとしている国(オランダやフィンランド)がある。日本はそういう実験はできない国なので、諸外国の結果を見ての議論となるだろうが、日本らしいことである。それにしても、その「AI 革命」を本書では「第四次産業革命」と読んでいるが、情報革命であった「第三次産業革命」に関しては日本は完全な敗者であった。本書を引用しよう。「パソコンの基本ソフトウェアはウィンドウズ、検索エンジンはグーグル、ネット上のショッピングはアマゾン、スマートフォンiPhoneSNSフェイスブックツイッター」(p.189)…。そして、その「第四次産業革命」においても日本が敗者である可能性は高い。これは悲観論ではなく、現在の日本のソフトウェア産業に多少の興味をもつ者が、まずは疑えない予測なのだ。もちろん日本人のプログラマが優秀でないのではまったくなく、問題は彼らを使う日本企業なのである。端的に言って、日本では優秀なプログラマはなかなか報われない。そして、プログラマが使い捨てにされる現状…。これについては、これ以上は書かない。しかし、どうしてこの事実が日本では広く共有されないのだろう。これに関しては、新書の一冊でもあってしかるべきだと思うのだが。自分が知らないだけか。
ウチのテレビはシャープの AQUOS なのだが、買ったときから一体型のブルーレイドライブの調子が悪い。購入した量販店に一度不具合を言って、ドライブ自体を新品交換したのだけれど、またダメである。もう一度量販店のサービスに来てもらうと、これはもうどうしようもないということで、シャープに連絡するということだった。サービスの人の話だと、どうもこういうことが最近ちょくちょくあるらしく、つまりは製品化段階で問題があるということなのだろう。しかしシャープに来てもらって、でシャープがどうしてくれるというのか。日本製の「ブランド」でこういうことがあるとはなあ。まあ、ウチだけ特別の例外だったらまだ救われるのだけれど。ああ、そういえばシャープはもう日本企業ではなかったね。