朝井まかて『落陽』/岩渕功一『トランスナショナル・ジャパン』

晴。
音楽を聴く。■クヴァンツ:フルート協奏曲ニ短調 QV5:86 (トゥンス、参照)。クヴァンツはカッコいい。こんな作曲家が埋もれているなんて。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第十九番 K.459 (ロナルド・ブラウティハム、マイケル・アレクサンダー・ウィレンス)。フォルテピアノによる、いわゆる「歴史的に正しい」演奏。フォルテピアノは相変わらずペコペコでおもちゃのピアノみたいな音だ。これで特に新しい発見があるというわけでもない。ただ、モーツァルト自身はこういう響きの音楽をやっていたのかという確認はある。まあ、「歴史的に正しい」演奏が好きな人はどうぞ。

モーツァルト : ピアノ協奏曲 第19番 第23番 (Mozart : Piano Concertos Nos 19 in F major & 23 in A major / Ronald Brautigam , Die Kolner Akademie , Michael Alexander Willens) [SACD Hybrid] [輸入盤]

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  • アーティスト: ロナルド・ブラウティハム,モーツァルト,ミヒャエル・アレクサンダー・ヴィレンズ,ケルン・アカデミー,ロナルド・ブラウティハム(Pf)
  • 出版社/メーカー: BIS
  • 発売日: 2013/02/28
  • メディア: CD
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図書館から借りてきた、朝井まかて『落陽』読了。母から廻してもらった本。明治神宮の鎮守の森が人工林の傑作であることは以前から知っていて、もう少し詳細を知りたいと思っていた。本書はそれにも関係する小説である。主人公は明治から大正時代の三流新聞の記者で、新聞社を舞台にして明治天皇崩御明治神宮の造営を巡り話が進んでいく。小説としてはおもしろくないことはなかったが、書きたいのは新聞社についてなのか、明治神宮の人工林についてなのか、明治天皇についてなのか、あるいは明治という時代そのものについてなのか、拡散して焦点が合っていないようにも思えた。小説としてはさほどの出来ではないと感じたが、まあこれは自分がそう思うというだけのことである。自分の期待した明治神宮の人工林については、踏み込みがアマくてそれほど満足できなかった。天然更新する、自然を模した生態系を人工的に作るという偉業については、さらに他著を期したい。それから、明治天皇の内心を忖度するという試みについては、たぶんこれが著者の書きたかったことなのだろうが、小説であるなあとしか言いようがない。まあ、まずまずのエンターテイメントというところであろうか。
落陽

落陽

岩渕功一『トランスナショナル・ジャパン』読了。副題「ポピュラー文化がアジアをひらく」。この分野の古典的著作ということであるが、読後感はまず賞味期限の切れた下らない本というところであった。もちろんこれは自分が田舎者ゆえであって、アジアとかジャパナイゼーションとか口走りたい人には必読書かも知れない。本書の前提であり、であるから本書には一行たりとも書かれてはいないが、著者の常識では文化はマネーであり、消費されるものであり、権力であるということだ。自分はナイーブにそれを否定したりはしないが、勝手にやっていてくれという感じである。著者もまた、自分のような読者を想定していないだろう。文体としてはまさしくカルチュラル・スタディーズであり、世界標準というべきか。かしこい人たちに勧めたい。しかしこういう本って、結局はマーケティング本なのだよね。まさしく先日読んだウェルベックの揶揄する世界そのものだ。岩波書店グローバリズムのお先棒を担いで、立派なものである。どうでもいいけれど。