小川洋子『完璧な病室』

晴。
音楽を聴く。■バッハ:カンタータ第121番「キリストを我らさやけく頌め讃うべし」(カール・リヒター参照)。■武満徹:鳥は星形の庭に降りる、群島S.、弦楽器のためのコロナII(外山雄三参照)。■エルンスト・トッホ:弦楽四重奏曲第十二番op.70(ヴェルディQ、参照)。佳演。ショスタコーヴィチを思わせないでもない。もっと聴かれていい曲。■ブラームス:二重協奏曲op.102(オイストラフロストロポーヴィチ、セル、参照)。この曲、いまひとつよくわからないのだけれど。■■グリーグ:ピアノ協奏曲op.16(ペライアコリン・デイヴィス参照)。久しぶりに聴いたけど、意外とよかった。よくできたポピュラー曲だな。■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第一番K.279(ピリス、参照)。

小川洋子『完璧な病室』読了。たぶん、小川洋子の初めての小説集であろう。まだ「幻想小説」とは呼べないかも知れないが、一応現実世界を描写しつつ、常に静謐な幻想世界に逃れ去っていこうとする傾向は否めない。つまり、処女作(本書所収の「揚羽蝶が壊れる時」)から、小川洋子は既に小川洋子であったということである。特にここでは、彼女の有機体、ぐにゃりとしたもの、べたべたしたものに対する嫌悪が、はっきりと出ている。病室は清潔で透明であるがゆえに、「完璧」なのである。そして、「死」への近さ。その「死」も、現実であるよりは、どこか透明で非現実的な感じが付き纏っている。幻想の方へ突き抜けていくのは、ここから近い。
 小川洋子の小説には、これまで裏切られたことがない。質が高くて、さらに読んでいておもしろいのだ。「ブ」で買うだけでは、いけないかな。

完璧な病室 (福武文庫)

完璧な病室 (福武文庫)