青柳いづみこ『我が偏愛のピアニスト』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第二十三番K.488(ブレンデル、マリナー)。■ショーソン弦楽四重奏曲op.35(タルティーニQ)。

Chausson: Concerto Op 21/String Quartet

Chausson: Concerto Op 21/String Quartet


木の芽時なのに昨日はハードな現代音楽を聴き過ぎたので、今朝起きた時はつらかった。人間の心は簡単に病むので、気をつけねば。
青柳いづみこ『我が偏愛のピアニスト』読了。文庫新刊のチェックから漏れていた本。先日気づいて購入した。周知のことだろうが、青柳いづみこさんは優れたピアニストであり、また優れた文筆家でもある。この人が音楽について書いたものは、殆どすべてがおもしろい。個人的には、青柳さんは、亡くなられた吉田秀和氏以降、最高の「音楽評論家」(だけではないので、そう云うのは失礼かも知れないが)だと思う。とにかく、青柳さんの本を読むと、猛烈に音楽が聴きたくなって仕方がなくなる。こんな人は、滅多にいないのである。
 本書も読んでいて強烈に惹きつけられた。内容は題名どおりなのだが、注意すべきは、本書で取り上げられているのは、すべて現役の、それも日本人ピアニストに限られているのである。自分はものを知らないので、本書で語られるピアニストで、知っている人はほんの数人だけだったから、これは嬉しい本を読んだと思った。日本人ピアニストは大いに聴いてみたいが、どんなピアニストがいるのか、無知もいいところだからである。本書は、いいガイドになりそうだ。それにしても、音楽というものは無限に深く読み込んでいけるものだと思う。こうした優れた聴き手の文章を読むと、自分は何を聴いているのかと思ってしまうくらいだが、まあ言うまい。音楽は本当に楽しく、また素晴らしい。そんな陳腐な感想が、思わず口をついて出てしまいそうである。音楽好きには、きっとまたとない本だと思いますよ。

シューベルト即興曲op.90(小山実稚恵)。典型的な日本人ピアニストの演奏。味気ない。

武満徹:雨の樹 素描I,II(小川典子)。10:55あたりから。見事な武満。

ショパン:練習曲op.25-6(海老彰子)。1980年のショパン・コンクールでの演奏。このとき海老彰子は五位だったのだが、You Tube に書き込まれたコメント(これが五位なら一位はどんな鬼畜だ?)が笑えるとおり、見事な演奏である。じつは、上の青柳さんの本によると、海老彰子は充分優勝を狙える状態だったのだが、かのポゴレリチのスキャンダル(アルゲリッチが審査員を途中で辞めてしまったという例のやつ)があって、海老さんはそれに巻き込まれてしまったらしい。まあしかし、その実力は後年の活躍が証明している。
 しかし、青柳さんの挙げた日本人ピアニストの演奏を、You Tube で聴いてみようと思ったのだが、予想より動画が少ないな。やはり、日本人ピアニストは、あまり興味を持たれていないということだろうか。(AM3:33)