萩原朔太郎『虚妄の正義』/内田樹『寝ながら学べる構造主義』

晴。もう毎日暑い。でも、父がつくつくぼうしを聞いたそうだ。となるとまもなく秋か。
CoCo壱番屋岐阜都通店にて昼食。ソーセージ・きのこミックス880円。

萩原朔太郎『虚妄の正義』読了。ニーチェアフォリズム集を狙っているのだろうが、はっきり云ってダサい。武林無想庵は「ヴアレリイの『ヴアリエテ』を読むとフランス文学の高さがわかる。萩原朔太郎の『虚妄の正義』を読むと日本文学の深さがわかる」と言ったそうだが、恥ずかしい話である。しかし、確かに今読むとそのダサさがイタいのだが、萩原朔太郎の才能を以てすらこれなのだ。日本は必死に思想面でも西洋に追いつこうとし、それを試みた結果なのである。そうした偉大な才能の途轍もない努力の末に、我々は立っているだけのことである。彼らのやった努力は、我々に比べれば遥かな「高み」にあるのだ。その工事現場の後を見て、ダサいと思えるに過ぎない。もちろん本書は、もう読む必要はないのかもしれないが、それは仕方のないことである。いや、やはり読んだ方がいいのかも。我々はバカだからな。

図書館から借りてきた、内田樹『寝ながら学べる構造主義』読了。本書を読むまで内田樹はいまひとつどうでもよかったのだが、御免なさい、自分が間違っていました。内田樹はじつに頭のいい人であることがわかりました。この人、日本人には大変めずらしく、自分の頭で考えることができる人なのだ。それから、内田による引用部分の翻訳がじつに読みやすい。当り前かもしれないが、負けたと思いましたね(あほか)。人気が出るはずだ。まあ、じつはまだちょっとどうでもいいのだが、これは嫉妬のせいではないか。あかんなあ。本書で一番感心したのは、レヴィ=ストロースの評価だ。この人はフランス人でも正当に評価していないし、(無理もないのだが)柄谷行人浅田彰みたいな超かしこい人たちでも評価を間違えているくらいわかりにくい思想家なのだが、内田樹はきちんと核心を捉えている。これは凄いです。この人は大筋を間違えないという印象を受ける。
 どうでもいいことだが、近所の図書館は第31刷を入れているのだけれど、何となく図書館側の微妙な気持ちが出ていて苦笑させられる。内田樹は、もっと図書館で借りてみるつもり。
寝ながら学べる構造主義 ((文春新書))

寝ながら学べる構造主義 ((文春新書))


佐藤文隆先生の本を次々と落手。『相対論と宇宙論』は専門書だが、先生の初学者向けの専門書は初めて入手した。一九八一年の出版なので、かなり古い本だが、入門書なので現在でもまったく問題ない。相対論の入門書は日本語でも山のように(というのは大袈裟か)あるが、さすがにユニーク。というか、カッコいいのだけれどむずかしいのですが。上手く云えないけれどね。内山龍雄先生の本とはだいぶちがうな。内山先生の本は、これはオーソドックスで、最初に読むならこちらがいい。佐藤先生の方は、優秀な学生向けで、容赦なしという感じなのだが、まあ自分のいうことなのであまり信用しないように。カー・ブラックホールの記述まであるのはさすがで、エディントン・フィンケルシュタイン座標やクルスカル座標の説明もあるとか、練習問題でペンローズ図を学ばせるとか、このあたりが容赦ないというのだ。先生の見つけた重力場方程式のTS解の説明は無いようで、ちょっと残念だが、さすがにむずかしすぎるからな。そのうちまたざっと目を通すつもり。
今の子供たちについて、最新の一次資料を持っているという確信がある。これからの日本は、エリートは出てくるかもしれないが、全体のレヴェル(これは必ずしも学力だけを云うのではない)が下がって没落しますよ。そして、普通の人たちが傲慢になり、人間関係のギスギスした人気(じんき)の悪い国になると思う。