映画「電車男」を観る/ケネス・B・パイル『欧化と国粋』/東浩紀編『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』

晴。
カルコス。森永卓郎さんの新書新刊を買いに行ったのだが、置いてなかった。平積みされているくらいかと思っていたのだが。仕方がない、またネットで買うしかない。出来るだけ地元の本屋で買おうと思っているのですがねえ。

今更ですが、偶々かの映画「電車男」を観てしまいましたよ(録画)。電車の中で絡まれている女性を、勇気を出して助けたオタクの「電車男」が、2ちゃんねるの書き込みに叱咤激励されながら、気力を振り絞って女性にアプローチしていくというような筋書きで、実話*1(有名で、本にもなった)を元にしている。「電車男」はなさけなくて、本当にオドオドしっぱなしで恋心は女性にばればれなのだが、こういうのは却って「かわいい」と思う女性はたくさんいるのではないかな。途中上手くいかないのかなという感じだったので、クライマックスでは、思わずじーんと来ましたね。ただ、冒頭のシーンに戻るラストは、ちょっとわからない。夢落ちだったら、「電車男」が気の毒すぎるのだが。取り敢えず、面白くて感動しました!

ケネス・B・パイル『欧化と国粋』読了。副題「明治新世代と日本のかたち」。明治中期の政治思想状況を、徳富蘇峰の民友社と、三宅雪嶺陸羯南志賀重昂らの政教社を対比させて描く。非西欧地域では必ず見られることだが、西欧化による民族の伝統の軽視と、それとは逆の、伝統の称揚の二者の対立を、どう捉えるかという問題。日本ではそれが典型的に、明治中期に現れたわけである。明治の頃ほどではないが、日本では今でも、この問題は決着がついてはいない。例えば、日本人優秀論と、非優秀論の対立は、この問題系の中だろう。輸入学問は今でも現役の現象である。

欧化と国粋――明治新世代と日本のかたち (講談社学術文庫)

欧化と国粋――明治新世代と日本のかたち (講談社学術文庫)

東浩紀編『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』読了。チェルノブイリ を観光するという試み。続巻として、『福島第一原発観光地化計画』なるものが出版されるらしい。若い人たち(まあ自分の同世代とその下という感じだが)がやることには驚かされるね。本書はマジメにやっているのは間違いない。が、正直言って、観光の部分は、目がすべって、活字が頭に入ってき難かった。現地の色々な人たちにインタヴューしたところは面白かった。観光でもいいから、チェルノブイリを知って欲しいというのが大多数の声だったので、そういうものかと思った。事故に関するゲームまであるそうで、そこそこヒットしたものらしいが、それでも忘れられるよりはいいのだと。福島の人たちも同じ気持ちだろうか。編者たちには、福島の観光地化は「正義」だという感覚があるようで、へーと思った。まあ、続編も読んでみようと思う。
 本書の支柱である「ダークツーリズム」という発想の感覚は、わからないことはない。例えばアウシュヴィッツへ行くとか。自分も、観光のついでに知覧へ寄ったことがあるし。あの時は、語り部の方が語っておられた。それを聞いて自分は変ったか。戦争の悲惨さをより強く感じるようになったか。むずかしいところである。
※追記 相変らずブログ「西東京日記」(参照)さんが上手いこと纏めている。これを読んだり、また雑誌をペラペラ繰り直していて思ったのだが、チェルノブイリの「観光地化」というのは、現実を知らしめると同時に、何かの隠蔽になっているのではないか、ということである。ある情報が強調されるということは、別の情報を忘れさせることにもなり得る。実際、チェルノブイリ原発は現在でも稼働しており、観光地化はその正当化に使われているとも云えるだろう。
チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

*1:これを疑問視する説もある。その他Wikipediaを参照。