鎌田道隆『お伊勢参り』

雨。
鎌田道隆『お伊勢参り』読了。江戸時代のお伊勢参りについての本。江戸時代にお伊勢参りは盛んだったが、庶民があまり金も持たずに、沿道の人々の支援を得て参ってしまうのには驚かされる。もっともこれは稀なことではなく、明治になってからでも庶民が着の身着のままで長距離を移動していってしまうのは、宮本常一の本でもわかることである。また、「お伊勢参り」と云っても、伊勢神宮に参るだけでなく、各地を広く廻ることも多かったようだ。「ぬけ」と云って、奉公人が主人にも告げず、お伊勢参りに出かけてしまうこともあったらしい。また、どう解釈したらいいかわからないのだが、「おかげまいり」という、突発的な集団巡礼も、不思議である。ちょっとハーメルンの笛吹き男を思い出させないでもない。
 それから、これは現代の話だが、著者の研究室では二十五年にもわたって、大学のある奈良から、江戸時代そのままに、徒歩でお伊勢参りをやってきた実績(?)がある。これも研究の一環ではあるのだが、旅の原初形態を彷彿とさせて、この部分はとても読ませる。こうした学問の仕方もあるのだ。

お伊勢参り - 江戸庶民の旅と信心 (中公新書)

お伊勢参り - 江戸庶民の旅と信心 (中公新書)