ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』/ベームの指揮するモーツァルトのレクイエム

雨。
ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』にざっと目を通す。自分が本書を読むのは、経済学的幼児が大学院レヴェル以上の学問に取り組むようなものだが、通読してみて何も得るところがなかったわけでもない。少なくとも、岩波文庫の間宮陽介訳は中身をほとんど覚えていないが、本書山形浩生訳は読みやすい日本語になっていて、読むのが本当に楽になった。翻訳の勝利だと思う。クルーグマンのイントロダクション、ヒックスがいわゆる「IS-LMモデル」を導入した論文も併録されていて、お得感が抜群だ。順序が逆かも知れないが、さて、今度は基礎的な教科書を読もうかな。

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)


カール・ベームの指揮する、モーツァルトのレクイエムK.626を聴く。名演として名高いもの。モーツァルトのレクイエムは、彼の絶筆でもあり、曲に纏わるミステリアスなエピソードのせいもあって、なかなか音楽そのものを聴くことは難しくなっている。今回聴いてみて、マーラーを思わせるほど、非常に表現主義的な音楽になっていることに気づいた。特定の形式に当て嵌まりにくい音楽だと思う。ドラマティックで、気分の交代が激しい。芸術としてみれば、モーツァルトの同じ宗教曲なら、大ミサ曲K.427の方が名曲だと云えるかも知れない。しかし、有無を言わさず聴かせる力というものは、確かにある。「怒りの日」などは、音楽を超えているところすらある。
 ベームの指揮は振幅の大きなもので、もっさりしたところもあるが、名演の名には恥じない。全体を通じて、特に合唱の緊張感が素晴らしく、言葉は多少聞き取りにくいものの、気合の入ったオーケストラすら圧倒するほどだ。なお、いつも問題になる、弟子の作曲した後半部であるが、結構よく書けてはいるけれども、やはり誰もが言うとおり、芸術としては前半部分と比較にならない。今回聴いたのも、モーツァルトが書いた部分だけであったことは記しておこう。
モーツァルト:レクイエム

モーツァルト:レクイエム