宮脇昭『森の力』

曇。
レンタル店。図書館。
音楽を聴く。■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第六番(グールド)。

宮脇昭『森の力』読了。副題「植物生態学者の理論と実践」。著者は植物生態学者として、八十五歳の今になるまで、総計四〇〇〇万本にもなる樹を植え続けてきた。もちろん、樹を植えるというのは、今では別に珍しくない。しかし、ただ樹を植えるというだけではダメなのだ。例えば中国の緑化として、日本から樹を植えに行くというのはポピュラーになっている。それに関して中国の関係者から、著者は「実は日本から自己満足で植樹ツアーに来て欲しくないのです」と云われ、驚いた。これは中国側の傲慢ではない。というのは、だいたい三年も経つと、植えた樹は姿を消し、つっかえ棒と看板しか残らないことになるからである。結局、運びやすいように根をカットするなど、日本の造園業者が適当にやっているだけで、科学的な知見に基づいて行われていなかったからだ。(そういうことを言うから、著者は造園業者や林野庁から「天敵」だと云われているそうである。)長持ちする人工林を作るには、植え方にも工夫を凝らし、さらに著者の言う「潜在自然植生」*1 に向けて行われねばならない。そうすれば、大火や津波にも強い、長持ちする、自然に近い人工林を造ることができるのだ。実際それは、関東大震災阪神・淡路大震災の火災に耐え、東日本大震災津波に負けなかった。
 このような緑とのつきあい方は、我々の生にとっても実際重要なことである。それにしても、著者は自ら省みて学問ばかりの一生であり、家族にも迷惑をかけたようなことを書いているが、もうこうした生き方は今では許されないかも知れない。しかし、学問バカというこれもまた、見事な人生ではないだろうか。


やっぱりほがらかさですね。朗らかさがないといけない。

*1:「潜在自然植生」とは、人間の影響をすべて排除した場合、その土地の自然環境の総和が持っていると考えられる潜在能力によって決定される植生のこと。